「遺族年金」とは「家族を養っていた人が亡くなった際、残された家族に対して年金が支給される」という制度です。この制度を聞いたことがある人は多いでしょうが、いざ自分がもらう立場になったとき、実際にいくらもらえるかわからないという人は少なくありません。そこで今回、FP事務所ストラット代表の伊豫田誠氏が、54歳の夫を亡くしたAさんの事例をもとに、遺族年金と「万が一の事態」への備えについて解説します
手取り45万円・54歳会社員の夫急逝…〈遺族年金支給額〉をみた妻「死ぬまで働くしか」【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

国の社会保障制度、「遺族年金」の種類と詳細

まずベースとなる国の社会保障制度には、配偶者の突然の死去に備えて「遺族年金」の制度があります。

 

この遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、亡くなった方が国民年金か厚生年金のどちらに加入しているかで決まります。

 

遺族基礎年金

国民年金に加入していた場合、遺族基礎年金の対象となりますが、子どもがいない場合は給付がありません。

 

子供がいる場合は、年額77万7,800円を基本額とし、子ども2人まで1人につき年額22万3,800円、3人目からは年額7万4,600円が、子どもが18歳になる年度の3月31日まで加算されます※。

※出所:日本年金機構

 

遺族厚生年金

亡くなった方が厚生年金に加入していた場合には、「遺族厚生年金」の対象となります。

 

遺族厚生年金は、子どものある配偶者が一定の条件を満たす場合は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の両方が、そうでない場合には「遺族厚生年金」のみが支給されます。具体的な条件や金額は家庭状況や被保険者の収入によって変わってきますので、自身で確認しておきましょう。

 

寡婦年金

夫が亡くなったとき、その配偶者が「40歳以上65歳未満」でかつ生計を同じくしている子どもがいない場合と、上記のように遺族厚生年金・遺族基礎年金を受けていた子どものある配偶者が、受給期限に達したなどして、遺族基礎年金を受給できなくなった場合に支給されます※。

※詳細は日本年金機構HPをご確認ください。
https://www.nenkin.go.jp/index.html

 

今回のA夫妻のケースは、夫の給料が45万円で配偶者と子ども1人でしたので、遺族厚生年金の支給額は子供が18歳(18歳になった年度の3月31日)まではおおよそ月額14万円前後、それ以降は妻のみが月額6万円前後となります。

 

そのため、社宅を退去して新たに賃貸物件に入居すると考えた場合には、妻は仕事に就く必要が出てきます。

 

しかし、これまで専業主婦だった人にとって、十分なキャリア無くこの年齢から満足な給料が得られる職は少なく、労働時間で補うしかありません。

 

子どもが大学を卒業するまでの生活費は絶対に必要になりますし、Aさんの場合子どもが1人暮らしをして大学に通うため仕送りが必要です。

 

Aさんは少しでも収入を増やそうとダブルワークをしていたようですが、疲れて帰っても家には夫も子どももいません。Aさんは朝から晩まで続くダブルワークの毎日に、心身ともに疲れ果ててしまいました。