会社勤めの期間が短いと、将来受け取れる公的年金額が多いとはいえません。夫は工務店の社長、妻は専業主婦、お金には堅実的な2人ですが、老後の生活資金が足りなくなる可能性がある夫婦の事例を、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。
「年金月15万円」で「貯蓄3,000万円」でも…59歳・工務店社長が逆に笑ってしまった、FPからの“衝撃の指摘” (※写真はイメージです/PIXTA)

60歳からできる見直し方法

Sさん夫婦が破綻せず生活するにはどのように改善するとよいのでしょうか? 60歳を迎えるにあたって見直しをしてみました。前段で試算した60歳時点の公的年金額を増やすことを検討します。

 

見直し1:夫の年金受給額の調整

680,575円を65歳まで任意加入し満額(777,800円)の年金額にする。

 

見直し2:年金受給の繰り下げ

65歳以降も調整しながら仕事を続け、65歳からの年金を70歳(60月)まで繰下げる。

 

老齢基礎年金:(夫)777,800円×60月×0.7%=326,676円アップ

       (妻)777,800円×60月×0.7%=326,676円アップ

老齢厚生年金:394,632円×60月×0.7%=165,745円アップ

 

合計819,097円増額するため、2,769,329円(月額230,777円)となります。

 

見直し3:老後の支出を見直し

現役世代と同様の生活ではなく、夫婦2人の生活支出を見直すことも大切です。さらにお金に働いてもらうことを検討します。

 

見直し4:3,000万円の預金の一部に働いてもらう

3,000万円を貯めたとしても、働けなくなった場合、毎月切り崩す金額によっては、平均余命まで待たずに底ついてしまいます。老後資金の一部を資産運用し、資産寿命を延ばすことを考えます。

 

高齢期での資産投資はリスクがあることを考えると、はじめての人はためらうこともあることでしょう。少額かもしれませんが、つみたてNISAは投資初心者をはじめ幅広い年代の人にとって利用しやすい仕組みとなっています。つみたてNISAは年間40万円までとなっています。夫婦各々で月3.3万円まで積み立てることができます。毎月3.3万円の少額投資による積み立て投資します。

 

年3%の収益が期待される低リスク商品に投資した場合、10年間の投資期間で貯めることができるのは約460万円です。夫婦2人で約920万円となります。なにもしないで口座に置いていた場合と比較して約130万円増やすことができます。また、つみたてNISAとは別に1,000万円を資産運用した場合、年3%の想定利回りで運用期間を10年とすると収益は約340万円となります。

まとめ

人生100年時代といわれ、仕事を引退してからの期間も長くなっています。前段のような少しの努力を積み重ねることで、老後生活のゆとりは大きく変わってきます。収支をみつめなおすことで無理なく改善できることもあるので、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーに相談してみることも検討してみてはいかがでしょうか。

 

[参考]

金融庁:資産運用シミュレーション

公益財団法人生命保険文化センター「生活保障に関する調査」

 

 

三藤桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

代表