30年で大きく進化…不整脈に効果的な薬の「新常識」【専門医が解説】

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30年で大きく進化…不整脈に効果的な薬の「新常識」【専門医が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

不整脈と診断されたとき、まず選択肢のひとつとなる薬物療法。不整脈に対する薬物療法はこの30年間で大きく進化し、さまざまな新薬が開発されています。しかし、具体的な病名や症状によって正しく薬を使い分けなければ、思わぬ副作用に悩まされたり、最悪命が危険にさらされることも……。今回は、患者自身も知っておきたい不整脈に効果的な薬とその選び方について、東京ハートリズムクリニックの桑原大志院長が解説します。

不整脈のタイプによって使う薬も異なる

不整脈の種類は大きく分けて「3つ」

不整脈は大きく分けて、脈が遅くなる「徐脈」、脈が速くなる「頻脈」、脈が飛ぶ「期外収縮」の3つに分けられます。また、「どのタイプの不整脈か」によって、服用すべき薬も異なります。

 

まずは、心臓の働きについて簡単に復習しておきましょう。心臓は右心房、左心房、右心室、左心室という4つの部屋でできています。

 

右心房の上部には、心拍動の命令を出す「洞結節」という組織があり、安静時で1分間に50~100回の電気刺激を発生しています。その電気刺激は心房のなかで放射状に広がり、その後心房と心室の間にある「房室結節」に集まります。

 

そして、房室結節を通過した電気は、心室の刺激伝導系という特殊な心筋に到達。この電気が心臓の各所に伝わり、心臓はリズミカルに収縮を繰り返します。下記の[図表1]が心臓のなかを電気が流れる様子を表しています。

 

[図表1]心臓のなかを電気が流れる様子 イラスト:東京ハートリズムクリニックHP(https://www.tokyo-heart-rhythm.clinic/medical-content/contents/part-1/chapter-1/)
[図表1]心臓のなかを電気が流れる様子
イラスト:東京ハートリズムクリニックHP(https://www.tokyo-heart-rhythm.clinic/medical-content/contents/part-1/chapter-1/)

 

徐脈性不整脈の原因は、この「洞結節」と「房室結節」の2ヵ所に関連しており、洞結節が阻害されると「洞不全症候群」、房室結節が阻害されると「房室ブロック」という症状を引き起こします。

脈が遅くなる「徐脈性不整脈」はペースメーカーが基本

現代の医療において、体のなかにできた異物や不具合を「取り除く」技術はとても進化してきました。

 

たとえば、ガンができれば外科手術や抗がん剤治療などでそれを除去しますし、不整脈があればカテーテル治療で障害を起こしている部位を焼き切って治癒させます。しかし、本来持っていた人体機能が失われてしまった場合、それを医学的に取り戻すのはとても困難です。

 

そんななか、京都大学iPS細胞研究所名誉所長の山中教授が発見したiPS細胞は、失われた機能を取り戻すことができる手段として非常に大きな注目を集めています。不整脈の分野でもiPS細胞を心房に植えてペースメーカーを回避する研究が進められています。

 

しかし、まだ実現にはいたっておらず、徐脈性不整脈の治療はペースメーカーが基本です。

 

唯一薬物治療が可能な「洞不全症候群」には「シロスタゾール」が有効

徐脈性不整脈のなかで唯一薬物治療できるのが、脈が遅くなる不整脈の1種「洞不全症候群」です。これには「シロスタゾール」という薬物が有効です。

 

この薬物は、血液をサラサラにする効果があり、脳梗塞の患者さんが服用していましたが、心拍数が早くなることが指摘されていました。

 

そこで、現在は「高齢やなんらかの理由でペースメーカーの埋め込みが困難な人」もしくは「ペースメーカーを埋め込むほどの症状ではないが、心拍数を少し上昇させて労作時の息切れを解消させたい人」等に処方されるようになりました。

 

しかし、「シロスタゾールが洞不全症候群に有効である」という事実はあまり知られておらず、専門医ですらシロスタゾールの効果を知らないこともあります。

 

もし、洞不全症候群と診断され、「どうしてもペースメーカーを埋め込みたくない」という場合には医師にシロスタゾールについて尋ねてみてください。有効な場合があります。しかし、同じ徐脈性不整脈の房室ブロックには奏功しませんので、ご注意ください。

 

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