少々複雑な日本の年金制度。そのため、本来もらえるはずのものがもらえない……そんな悲劇が起きることがあります。みていきましょう
年金月21万円もらえるはずが…70代・元会社員「年金にまさかの時効!?」寝耳に水の驚愕事実 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金は請求しないともらえない…意外と知られてない当たり前の事実

元気なうちはできるだけ働きたい、という人が増え、給与があるうちは年金の受け取りはいい、と考えるなら、繰下げ受給を検討するのもいいでしょう。

 

——年金の受け取りを遅らせるだけで、毎月の年金が増えるならいいね!

 

確かにそのとおりですが、なかには「年金の受け取りを遅らせるだけでいい」ということだけが先走り、申請を怠ってしまう人も。

 

老齢年金の受給権が発生した人には、受給開始年齢(65歳)に達する3ヵ月前に日本年金機構から「年金請求書」が届きます。必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に年金事務所へ提出すれば、年金の支払いがスタートします。老齢基礎年金もしくは老齢厚生年金のどちらかを繰下げ受給を希望するなら、年金請求書の希望欄に印をつけて提出します。両方とも繰下げ受給する場合は、66~69歳の間に「老齢基礎・厚生年金支給繰下げ請求書」を年金事務所か年金相談センターへ提出します。

 

そもそも日本の年金制度はなんでも手続きが必要。何もしなくても、時が来たら年金を手にすることができる、というものではありません「受給権」が発生したら、その権利を行使するかしないかはその人次第、ということです。

 

しかもこの受給権。5年が時効で、時効を迎えると受給権は消滅します。「71歳になったら年金月21万円!」などと浮かれて手続きを忘れていると、受給権自体、時効で消滅という、泣くに泣けない事態に陥ることも。

 

ただ安心してください。受給権は自動的に消えません。受給権には、年金の受給請求をしたら年金を受け取ることができる「基本権」と、支払期月ごとに年金を受給する「支分権」があり、5年間受給請求を行わなかったことを書面で申し立てることで、基本権による受給権は消滅しないようになっています。

 

一方、平成19年7月7日以降に受給権が発生した年金の支分権は、5年を経過しても自動的に消滅せず、国が個別に時効を援用し時効消滅します。簡単にいえば、過去にさかのぼって受け取ることができる年金は最大でも5年分ですよ、ということです。

 

また2023年4月以降は制度改正により、請求をした日の5年前に繰下げ受給の申し出があったものとみなし、増額された5年分の年金を一括で受け取ることができるようになります。

 

時効による悲劇はそう起きないようになってはいるものの、年金は請求しない限りはもらえない、ということに変わりはありません。なかには基礎年金だけでなく、プラスαで手にできる年金がある人もいて、せっかく手にすることができたはずの年金なのにて……ということも。そんなことにならぬよう、年金制度を正しく理解し、日本年金機構からの便りは、しっかりとチェック。然るべき請求をしっかりと行うことが重要です。