一人暮らし、いわゆるおひとり様の高齢者が増えています。最近の高齢者は元気な人が多いので、ひとり暮らしのお年寄り=不安というのはあまりに短絡的ですが、やはり年を重ねるに従って、介護状態になるリスクは高まります。一人暮らしに不安を感じるようになったら、介護施設へという選択肢がありますが、誰もが入れるというわけではありません。施設に入るほどのお金がない……そんなとき、諦めるしかないのでしょうか。みていきましょう。
年金月10万円「おひとり様高齢者」が途方に暮れる「老人ホームの請求額」…低所得でも介護施設に入る方法 (※写真はイメージです/PIXTA)

介護施設利用料金の平均は12万円…低所得のおひとり様には高嶺の花だが

収入の手段が限られる、高齢者。その半数は「収入は年金だけ」だといいます。現役の頃に十分に貯蓄をしていれば、足りない分は貯蓄から取り崩し、万が一のことがあっても安心、といった完璧な老後を過ごすことができます。しかし貯蓄も心許ない、という場合、限られた年金だけでやりくりをしなければならないので大変です。

 

また年を重ねると、人の手を借りなければ生活できなくなる可能性も。厚生労働省の調査によると、要支援・要介護の割合は、「70~74歳」で5.8%ですが、「75~79歳」で12.7%、「80~84歳」が26.4%、「85歳以上」で59.8%と、倍倍ゲームのように増えていきます。

 

高齢者のひとり暮らしに不安を覚える人もいるでしょう。なかには施設への入居を検討する人も。そこで考えないといけないのが、やはりお金の問題。ひと口に老人ホームといっても価格はピンキリ。公益財団法人生活保険文化センター『2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査』によると、施設介護の場合、平均月12万2,000円で、「15万円以上」が最も多く30.7%でした。月々の収入が10万~11万円ほどという、下位20%の人たちは少々厳しいと言わざるをえません。

 

——低所得で、老人ホームに入れない

 

そう思い悩むなら、「介護保険負担限度額認定制度」の利用を考えるといいでしょう。介護サービスを利用する際の自己負担額は、「サービス費用の1~3割」+「理容代などの日常生活費」+「食費」+「居住費」ですが、制度を利用することで、介護保険施設を利用する際の居住費や食費を軽減することのできます。

 

居住する自治体に申請すると「介護保険負担限度額認定証」が発行されるので、利用する施設に提示します。認定書の有効期限は、申請月の1日から7月末までとなっています。継続してご利用される場合は更新手続きが必要となります。

 

要件は「①本人及び同一世帯全員が住民税非課税であること」「②本人の配偶者(別世帯も含む)が住民税非課税であること」「③預貯金等合計額が、基準額以下(配偶者がいる場合は2,000万円以下、配偶者がいない方の場合は、1,000万円以下)であること」の3点。負担段階には4段階あり、所得・預貯金の条件によって度合いが変わります(図表2)。たとえば多床室の場合、1日の利用負担額が第1段階は0円、第2、第3段階は370円。食事負担額はショートステイ以外の特定介護サービスの場合、第1段階は300円、第2段階は390円、第3段階は650円となります。

 

出所:厚生労働省資料より作成
【図表2】 出所:厚生労働省資料より作成

 

このように、要件を満たすことで、「介護保険負担限度額認定制度」を利用することが可能。低価格でサービスを受けることができるので、低所得を理由に老人ホームを諦めようとしている人は、一度検討してみるといいでしょう。