多くの企業で「60歳定年」となっているため、60歳は多くの人にとって人生の岐路となるターニングポイント。働き続ける人、完全リタイアする人などさまざまですが、なかには「あと少し、働いたほうがいい」という人たちがいます。みていきましょう。
年金月17万円だが…月収36万円・勤続41年の会社員「60歳で退職」を全力で止められたワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

高卒で勤続41年…「44年特例」の要件クリアまで、あと3年

60歳で定年退職を迎えた人たち。中卒であれば約44年、高卒であれば約41年、大卒であれば約37年、会社員人生を頑張ってきたことになります。すべての人に「おつかれさまでした!」といいたいところですが、高卒の会社員で、1966年4月1日より前に生まれた女性であれば、「ちょっと待った―!」という声がどこからともなく聞こえてくるでしょう。そして「あと3年、会社員を」とアドバイスが……これは一体、どういうことなのでしょうか。

 

天の御告げかは分かりませんが、「あと3年」の根拠になっているのが、厚生年金の「44年特例」と呼ばれているものです。

 

会社員が手にする老齢厚生年金には大きく、60〜64歳に支給されるものと、65歳以降に支給されるものの2種あり、60代前半に支給されるものは、「特別支給の老齢厚生年金」といわれています。これは1986年に年金支給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことで「あと5年経たないと年金がもらえない、困った!」という人たちを救済する特別措置。

 

特別支給の老齢厚生年金は定額部分と報酬比例部分に分かれ、それぞれ受給開始時期が異なります(図表)。一定の年齢以下の人は65歳になるまで報酬比例部分として年金の一部分しか受給できません。そこで、厚生年金保険料を44年以上納めてきた人たちに、報酬比例部分だけでなく定額部分も受給できるようにしました。これが「44年特例」です。「厚生年金に44年以上加入」「厚生年金から外れている」「報酬比例部分の支給条件を満たしている」の3つを満たせば、報酬比例部分に加えて定額部分も受給できます。

 

出所:日本年金機構ホームページ『特別支給の老齢厚生年金』より
【図表】特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢 出所:日本年金機構ホームページ『特別支給の老齢厚生年金』より

 

卒業後すぐ会社員になっていれば、厚生年金加入期間は中卒で約44年、高卒で約41年、大卒で約37年。中卒であれば60歳定年時点で特例期間の44年を満たしています。高卒であればあと3年働くと、44年の要件を満たすことができます。大卒は残念ながら65歳まで会社員を続けても44年には手が届きません。

 

特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分に加算される定額部分は年額78万円。現行、希望すれば65歳まで働き続けることができる環境が整備されつつあるので、「高卒であと3年、会社員を続けたら……」という人は、44年特例を念頭にきちんと検討していきたいもの。 長い3年になりそうですが、一考の価値はありそうです。