長らく低金利環境が続く日本では、資産形成のために「外貨建て保険」を利用している人が少なくありません。しかし、その仕組みをよく知らずに加入し、トラブルに発展するケースが後を絶たないと、FP Officeの橋本徹氏はいいます。「注意すべきキーワード」を鵜呑みにしてしまった3人の事例をもとに、保険加入時の注意点についてみていきます。
営業マン「任せてくれれば大丈夫ですから…」無知な投資初心者を狙う「外貨建て保険」の甘いワナ【FPが警告】 (※写真はイメージです/PIXTA)

3.「定期預金みたいなものなので大丈夫です」

65歳を迎え、退職金を受け取ったCさん。すぐに使うあてもなく、運用にも興味があったため預けていた銀行に相談に出向いた。すると担当者からは、「一時払保険の利回りがいいですよ」と提案を受けた。

 

提案された商品は「外貨建て保険」。仕組みも完璧には理解できず、為替リスクなどの不安もあったことから加入を見送ると伝えると、担当者から「これは定期預金みたいなもので毎年利息も受け取れます。利息でお孫さんにプレゼントを贈ってあげる方もたくさんいらっしゃいますよ」と押され、Cさんは加入を決断した。

 

1年が経ったころ、急に自宅のリフォーム資金が必要になったCさんは、保険を解約したいと申し出た。しかし、解約金を試算してもらうと、預けた額より大幅に減っている。

 

担当者からは「加入してから一定期間は支払額を下回っている。さらに為替も加入時より円高になっており、解約金が減少してしまった」と説明された。

 

Cさんは「定期預金のようなものだと言っていた。定期預金が元本割れするなんて聞いていない」と訴えたが、「加入時にリスクなどはしっかりとご説明しています。重要事項にも同意の署名を頂いております」と突き返された。

 

Cさんは解約金が減ってしまったことを受け入れることができず、憤っている。結果的に、リフォーム資金は借り入れることになってしまった。

 

外貨建て保険に必ず存在する「リスク」 

生命保険の性質上、払い込んでまもないころは解約金が少ない場合がほとんどであり、退職金であれ余剰資金であれ、すべてを保険に入れてしまうと資金の流動性は失われてしまう。

 

また外貨建て保険であれば、必ず為替リスクが存在する。長期間保有していても外貨ベースで満期金や保険金が決まっているため、為替の影響により円で受け取る場合は支払った額より少なくなってしまう場合があることは理解しておく必要がある。

 

特に最近の円安で保険料が高くなっている場合は注意が必要だ。たとえば米ドル建て保険の場合、決まった米ドルで保険料を納めるため、円換算保険料は円安になればなるほど高くなる(毎月$100の保険料であれば、1ドル=100円の時は10,000円、1ドル=150円のときは15,000円となる)。

 

こうした場合、加入時より支払い保険料が高くなり、支払い自体が困難になってしまうケースも少なくない。なんとか払い続けたとしても、満期金や保険金を受け取る際に円高になっていたらと思うと……。

 

当然、外貨建て保険にも多くのメリットがあり、一概に「悪い商品」と判断するのは乱暴だ。メリット・デメリット、仕組みや解約金の推移など適切な説明を受け、自らもしっかり理解したうえで販売されるようになれば、苦情・相談件数も減少していくのではないだろうか。

 

 

橋本 徹

FP Office

ファイナンシャルプランナー