下請けの下請けの…アニメーター、低賃金から抜け出せない構造
前述のようにアニメーターはフリーランスが多いということから、厚労省の統計では、実態はみえにくいといえるでしょう。そこで一般社団法人日本アニメーター・演出協会『アニメーション制作者実態調査報告書2019』をみていきます。この調査ではフリーランスの回答者が50.5%を占め、異なる角度からアニメーターという職業をみていくことができます。
回答者の平均年齢は39.2歳で、7割が東京在住で、過半数が独身。その労働時間は、1日あたり平均9.66時間、1ヵ月あたり230.9時間。また休日は平均月5.4日。作業開始時間は最多が10時(19.6%)、作業終了時間の最多は24時(16.8%)。完全な夜型で、1日の労働時間はセーブしながらも、休みを削って働く……フリーランスが多い業界らしい働き方といえるかもしれません。
そんな彼らの年収は平均440万円。月あたり36万円、手取りは月27万円程度というのが、平均的なアニメーターの姿。やはり、フリーランスが多いからといって収入も良い、というわけではなさそうです。収入が低いことは、社会保障の状況をたずねる問からもうかがえます。年金の加入状況を聞いたところ、厚生年金が20.7%、国民年金が64.4%。そして「国民年金だが未払い」が10.5%。
現在、国民年金の保険料は月額1万6,590円。アニメーターの10人に1人がすべて同じ事情ではないにしろ、収入的に厳しく、年金の保険料も払えない……というのがアニメーターの実態のようです。
アニメ業界は日本を代表する産業のはずが、なぜそこで活躍するアニメーターは低収入なのか……それは構造に問題があるといえます。アニメの制作では、作業が元請の制作会社から下請会社に依頼され、さらに下請会社からフリーランスへと依頼されるケースが多くなっています。出来高払の賃金形態が主で、末端に位置するフリーランスともなると、手取りはかなり厳しくなってしまうのです。
また人件費の安い海外への制作発注も増え、下請けは「安いけど請けざるを得ない」という状況に。調査では「制作単価が安すぎ」「毎日が不安だらけ」「生きていくのも、やっと」など、厳しい状況を訴える声が並びます。
長時間労働に、低賃金……このような状況に、新たな担い手不足が深刻なアニメ業界。このまま日本の国際競争力を保っていけるのか、疑問符がついています。世界に誇るジャパニーズアニメを守るためにも、アニメーターたちの待遇改善が望まれています。