「更年期障害」と混同し受診に時間がかかるケースも
若年性認知症は50歳程度の働き盛りの男性がかかることが多く、女性が発症することの多い高齢者の認知症とは異なります。
また、遂行機能の低下や気分の変調に関して、50歳という年齢から女性のみならず男性でも、いわゆる性ホルモン機能低下に伴う「更年期障害」と自己判断してしまい、変化を家族や職場の方から指摘されるまで受診にいたらないなど、診断まで時間を要する傾向があります。
一方で高齢者の認知症とは異なり、比較的体力があるため、軽負担の就労やボランティアなどであれば活動が可能である場合が多いです。
孤立しがちな現状…地域ぐるみのサポートが急務
「若年性認知症」が疑われる場合、本人や介護者となるパートナーに対し、医療者は懇切丁寧な説明が必要です。若年性認知症と告知することで家族の感情が混乱し、受け入れられないケースが少なくありません。
医学的な疾患・治療の説明のみならず、今後の医学的な治療方針はもちろん、社会における生活(予測される症状、留意点、職場への配慮、福祉的なサポート)の説明が重要です。
患者が抱えるもっとも大きな不安は、経済面です。若年性認知症の場合、障害年金受給まで収入低下が続くことが多く、高齢者の認知症とは異なり地域包括支援センターでも対応が困難な場合があります。このことが心理状態にも大きく影響します。
社会との接点は持ち続けることが重要ですが、家族が若年性認知症であることを隠さず認め、そのことを近所・親族に話がしやすい環境づくりが不可欠です。
とはいえ、若年性認知症はまだ社会にあまり知られていない現状があります。求職時、ハローワークで若年性認知症と診断されたことを話したら、職(案件)を紹介されなかったなど、就労の機会が閉ざされてしまった例もあります。
このような現況では当事者が社会から切り離された感情を抱き、若年性認知症であることを隠して働く必要が出てきてしまいます。今後は行政をはじめとして、短時間労働や軽労働など若年性認知症患者に対する雇用の場の確保が急務です。
高齢者の場合認知症グループホーム、デイサービスは多数ありますが、若年性認知症の方にとってこのような場所は、年齢差や体力などの点から日中過ごす場所にはなりづらいです。
このため、現況の介護保険サービスの枠ではなく、軽作業やボランティア活動が可能な障害福祉サービスの枠組みなどの利用なども検討されます。
若年性認知症と診断された方や家族に対しては、周囲が社会参加を促し、もっとも不安である経済的困窮を解消し、希望をもって住み慣れた地域で生きていく社会環境を用意する必要があるでしょう※。
※ 若年性認知症を発症した人の就労継続のために
(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター)
https://www.nivr.jeed.go.jp/research/kyouzai/p8ocur0000000xio-att/kyouzai50.pdf
武井 智昭
高座渋谷つばさクリニック
院長
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