就職の出だしから逆境だった、いまの40代大卒
いまの40代はいわゆる「氷河期世代」。大学卒業時には就職難民となり、どうにかして正社員になるために不本意な就職をした人も少なくなかった。しかし、それが災いして就職先から脱落し、なかにはそのまま引きこもり状態となってしまった人もいる。
中高年の引きこもり問題はたびたびメディアでも取り上げられているが、いまの40代はそちらでも話題になることが多い。なにかとマイナスなトピックにおいて当事者になりがちな世代だといえる。
40代といえば、一般的には仕事や子育てに追われるしんどい時期だ。サラリーマンなら中間管理職として上司と部下に揉まれ、私生活で、教育費や住宅ローンで身動きが取りにくい不自由な時期。ならば、現在の40代だけ「特別に大変」ではないということか?
厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、大卒サラリーマンの平均給与は、40代前半で月44.2万円、40代後半で47.8万円となっている。手取りならそれぞれ、32万円、34万円といったところ。年収は、40代前半で推定676万円、40代後半で738万円だ。
では、10年前の2011年の、同じく40代サラリーマンの手取り・年収を見てみよう。
この期間に40代だったのは、1962年~1971年生まれで、今年51~60歳になる人たちだ。ほとんどがバブル期の“超売り手市場”だったころに就職活動の時期が重なっている。企業のなかには、学生の確保のため、交流会と称して高級レストランでの会食をたびたび開催したり、研修名目で海外に連れ出すなど、いまの時代にはありえないイベントが行われていた。とはいえ、71年生まれは就職氷河期の1期生。バブル世代との明確な線引きに、タイミングの悪さを嘆いた人もいるだろう。
さて、2011年の40代といえば、平均給与は40代前半で月48.5万円、推定年収は746万円。40代後半は月51.8万円、推定年収で836万円。東日本大震災という大災害があったものの、給与はいまの40代よりも明確に高かった。
いまの40代大卒サラリーマンの給与額、20年前以下に
では「40代大卒サラリーマン」の給与を、時代をさかのぼってそれぞれ確認してみよう。下記の一覧を参照してほしい。
★40代の給与の推移
数値左より、40代前半月額給与/推定年収、40代後半月額給与/推定年収
1999年:47.91万円/774.6万円 53.64万円/880.9万円
2003年:51.44万円/819.7万円 53.86万円/862.9万円
2007年:51.44万円/819.7万円 53.86万円/862.9万円
2011年:48.52万円/746.6万円 53.72万円/836.6万円
2015年:46.36万円/716.7万円 53.38万円/844.0万円
2019年:46.55万円/724.9万円 50.42万円/799.3万円
2021年:44.21万円/676.1万円 47.86万円/738.5万円
出所:厚生労働省『賃金構造基本統計調査』より算出
これを見ると、いまの40代の給与面の低さは明確だ。約20年前の1999年と比較すると、月額給与は8~11%、推定年収は13~16%もダウンしている。
読者からは「サラリーマン全体の給与が減っているのでは?」との疑問も聞こえてきそうだが、そうではない。下記の一覧を参照してほしい。
★サラリーマンの所定内給与の推移
1999年 :33.7万円
2003年 :33.6万円
2007年 :33.7万円
2011年 :32.8万円
2015年 :33.5万円
2019年 :33.8万円
2021年:33.7万円
出所:厚生労働省『賃金構造基本統計調査』より
上述の「40代の給与の推移」同様にサラリーマンの所定内給与の平均値を経年で追っても、1999年以降に大きな変化は見られない。それも驚くべき事象だが、そう考えると、いまの40代サラリーマンの給与事情がいかに気の毒なものかわかるだろう。
なぜ、このような事態が起こってしまうのか。
「非正規社員が増えた世代だから」「上世代の層が厚く、ポスト不足して給与が上がりにくいから」といった分析が複数あるが、結局のところ、それらの要因が複合的に影響し、いまの40代の「気の毒な状況」を生み出しているのではないか。
今後、現在の40代の給与事情が改善される見通しは立つのだろうか? 現状においては、プラスに転じる要素は見えてこない。
2022年を生きる40代は、厳しい状況に立たされている。
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