決して他人事ではない「若年性認知症」
不測の事態は、がんだけではありません。40代後半で10万人あたり17.4人、50代前半で10万人あたり51.3人……これは若年性認知症の有病率。認知症というと、だいぶ高齢になったらなるもの、というイメージがありますが、決して現役世代も無関係ではありません。肺がんや胃がん、大腸がんと同じ程度のリスクがあるといっていいでしょう。
【年齢別『若年性認知症有病率』(推計)】
18~29歳:4.8/1.9/3.4
30~34歳:5.7/1.5/3.7
35~39歳:7.3/3.7/5.5
40~44歳:10.9/5.7/8.3
45~49歳:17.4/17.3/17.4
50~54歳:51.3/35.0/43.2
55~59歳:123.9/97.0/110.3
60~64歳:325.3/226.3/274.9
※数値は10万人あたりの有病率で、単位は人。左より男性、女性、総数
出所:厚生労働省『令和2年若年性認知症実態調査』より
一般に、65 歳未満で発症する認知症のことを「若年性認知症」と呼び、推計3万5,700人。18~64歳の人口10万にあたりの有病率は50.9人、推定発症年齢の平均は51歳程度とされています。
がんは早期発見により「治る病気」といわれるようになり、治療後に仕事復帰したり、治療をしながら仕事を継続したりというのも、いまや珍しくありません。一方、いまのところ認知症は進行を遅らせることはできても、治すことは難しいとされています。もし、認知症を発症したら……気になるのは「お金」のことでしょう。
東京都『若年性認知症の生活実態に関する調査』(平成31年3月)によると、若年性認知症と診断された人のうち、発症前と同じ職場で働いている人はゼロ。「解雇」14.3%も合わせると、7割近くが「退職」の道を歩んでいます。また10%が「住宅ローンの返済あり」となっています。
仮に50代前半で若年性認知症を発症したとしましょう。給与は平均月42.2万円、手取りにすると32万円ほど。年収は推定694万6,900円です。平均通り新築マンションを購入したとしたら、ローンの支払いはあと20年ほど、残金は2,000万円を超えています。このまま、今の職場で働き続けることはできず、収入減は避けられそうもありません。
若年性認知症と診断されたら、将来を悲観するしかないのでしょうか。