成功の証、富の象徴……そんなイメージのタワーマンション。人気の秘密はいくつかありますが、そのひとつが資産性の高さ。周辺の物件より2~3割高く、売却益を得るケースも珍しくありません。そんなタワマンですが、将来も安泰というわけにはいかないようで……みていきましょう。
タワマン、限界を迎え廃墟と化す…現実味帯びる「最悪のシナリオ」 (※写真はイメージです/PIXTA)

郊外へと広がるタワマン計画

高さ60m以上の20階建て以上の超高層マンション、いわゆるタワーマンション、略してタワマンの人気はとどまるところを知りません。

 

タワマンのはしりとされているのが、1976年に誕生した「与野ハウス」。66メートル、21階建ての高層棟含め4棟からなる、総戸数463戸の大規模マンションでした。それから全国各地にタワマンが造られるようになったかといえばそうではなく、日照権等の問題から、いまのように都心には建てることはできず、敷地に余裕のある郊外に造られるのがひとつのパターンでした。

 

そんなタワマンが都心に建てられるようになったきっかけが、1997年の建築基準法改正。これで日照権や容積率などの規制が大幅に緩和され、都心に高層マンションを建てる条件は整いました。都心では高い需要が見込まれますし、より多くの戸数を販売できれば、デベロッパーとしても好都合。こうして都心の再開発計画にはタワマンがつきものとなります。90年代後半から活発化した東京・臨海部の開発でも、そこら中にタワマン群が誕生しました。

 

ただ都心という立地から、その価格は当然高く、全室億ションというのも当たり前。また税金対策として注目されたことから、購入者は富裕層に限られ、タワマン=富の象徴というイメージが定着しました。

 

しかしリーマンショック以降、徐々に購入者は富裕層から一般層へと広がっていきます。総務省『労働力調査』によると、2002年、共働き世帯は951万世帯。一方で専業主婦世帯は890万世帯。両者にそれほどの差はありませんでした。以降も共働き世帯は900万世帯台あたりで推移し、専業主婦世帯は800万世帯あたりで推移します。ただ2010年代に入ると、共働き世帯はぐんと増え2019年には1,245万世帯、専業主婦世帯は582万世帯に。

 

共働き世帯といっても、その形はさまざまですから、ひと括りにするのは無謀ですが、夫婦ともに正社員という世帯であれば、世帯年収は1,000万円を超えるでしょう。ともに大卒・正社員であれば、世帯年収1,500万円超えも珍しくありません。

 

さすがに都心のタワマンの高層階、数億円の部屋ともなると手は届きませんが、1億円程度の(低層階の)タワマンであれば、十分に検討できる水準です。

 

さらに都心のタワマンブームが郊外へと広まったのも、タワマンの購入者が富裕層から一般層に広がった一因。確かに資産価値の高いタワマンは、周辺の物件よりも2~3割程度高いというのが通説です。しかし郊外のタワマンであれば、最上階などは億超えとなるものの、最多価格帯は6,000万~8,000万円というのがよくあるパターン。最上階はその町の有力者が購入し、それから下は一般層が購入する……こうして一般人もタワマンに住む時代が到来したわけです。

 

不動産経済研究所の『超高層マンション市場動向』で「首都圏と近畿圏を除く、その他の地区で今後完成予定のタワマン」をみていくと、2020年は53棟(うち東海圏は14棟)、2021年は82棟(うち東海圏は22棟)、2022年は61棟(うち東海圏は10棟)。タワマンの建設ラッシュは、三大都市圏以外の地方都市にも波及しています。