(※画像はイメージです/PIXTA)

2023年から10万円の「出産準備金」の支給が開始し、「出産育児一時金」が5万円引き上げられることが話題になっています。しかし、長期的には、それらよりも母親・父親が働きながら仕事を続けられる環境の整備のほうがはるかに重要です。本記事では、その中核をなす制度の一つ「育児休業制度」について解説します。

2022年10月施行の改正内容とは?

育児休業については、2022年10月1月から特筆すべき大きな改正が施行されていますので、紹介します。主な内容は以下の3つです。

 

・産後パパ育休(出生時育児休業)の創設

・育児休業の分割取得が可能に

・1歳以降に育児休業を延長する場合の開始日の柔軟化

 

◆「産後パパ育休」(出生時育児休業)の新設

産後パパ育休は、妻が出産した場合に、子の出生後8週間以内に、4週間(28日)以内の期間を定めて取得できるものです。

 

これは、夫が出産直後の妻と子を支えるためのもので、育児休業自体とは別に取得できます。

 

合計4週間まで取得でき、かつ、分割して2回まで取得することもできます。たとえば、出生時・退院時に1回取得し、後でさらにもう1回取得するなどが可能です。

 

また、「出生時育児休業給付金」を受け取ることができ、金額は休業開始日の給与月額(日給×30日分)の3分の2です。

 

◆育児休業の分割取得が可能に

次に、育児休業を分割して2回まで取得することが可能になりました。たとえば、夫がいったん育児休業を取得したあと、妻の職場復帰等のタイミングで改めてもう1回、育児休業を取得するなどのことができます。

 

このことにより、妻の職場復帰がスムーズに行われやすくなります。

 

◆1歳以降に育児休業を延長する場合の開始日の柔軟化

子が1歳以降で、保育所に入所できないなどの事情がある場合については、育児休業の延長をすることができます。この場合も、「1歳~1歳半」の期間中で1回、「1歳半~2歳」の期間で1回、2回に分けて取得することができます。

 

従来、育児休業の延長の場合、育児休業の開始日は「1歳」「1歳半」のどちらかの時点に限定されていましたが、今回の改正により、これが柔軟化されました。これによって、夫婦が育児休業を途中交代して取得することができるようになりました。

「出産準備金」どころじゃない!育児休業制度の問題点

2022年10月からの育児休業に関する制度改正は、もしも徹底されれば、少子化対策・子育て支援として、一定の効果が見込める可能性が高いといえます。しかし、どのような立派な法制度も、実効性が確保できなければ、なんの意味もありません。

 

今日の少子化の根源的な問題は、所得の減少、共働き世帯の増大により、労働者が働きながら育児をせざるをえなくなっているにもかかわらず、それをサポートする制度が十分に機能してこなかった点にあることは、疑いがありません。

 

女性が育児のため勤務先を退職しなければならなかったり、男性の育児休業の取得が困難だったりといった事態は、長年にわたり放置されてきたといっても過言ではありません。

 

政府が打ち出している「出産準備金」の支給や「出産育児一時金」の増額といった施策が無意味とはいいませんが、より重要なのは、育児休業の制度の充実と実効性の確保です。

 

懸念されるのは、以下の通り、違反した事業主に対するペナルティが「氏名公表」「過料」程度の軽度なものにとどまっていることです。

 

1. 労働局から助言・指導・勧告を受けたのに従わない場合は、企業名が公表される

2. 労働局長から実施状況につき報告を求められた場合、報告を怠ったり虚偽の報告をしたりすると20万円の過料が課される。

 

政府がもし本気で少子化対策に取り組みたいのであれば、育児休業給付金の増額、労働者の育児休業の取得に非協力的な事業者や法令違反の事業主へのペナルティの強化など、より実効性を確保する取組にこそ本腰を入れることこと求められます。

 

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