離婚が決定したあと、大きく5つのことについて取り決めなければなりません。特に2人の間に子どもがいる場合、気になるのが「養育費」です。世田谷用賀法律事務所の代表、弁護士の水谷江利氏が解説します。
私立の学費、塾代、留学費…どこまで「養育費」に入るのか?【弁護士が「離婚のお金」を解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

養育費に対する考え方…養育費の具体的な費用について

離婚後は配偶者の扶養義務はなくなり、子どもを監護していないほうから監護しているほうへ、養育費の支払義務が生じます。この中に、教育費は含まれるのでしょうか?  というのも、昨今の中学受験熱の高まりや、私立学校や大学への進学、また子ども自身が「留学したい」など言い出したら……、子どもの進路のことを考えると、はっきりさせておきたいものです。教育に対する費用は、一体どうなるのでしょうか?

 

まず日本の法律では、離婚後は配偶者の扶養義務はないとしていますので、別居中は配偶者・子に対する「婚姻費用」、離婚後は配偶者を除き、子に対する「養育費」になります。

 

婚姻費用、養育費とも、従前の生活を基準に、元パートナーがいくら支払おうと当事者の自由です。ただし、それが両者の話合いの中で折り合わないときは、裁判所の標準的算定表・算定式により、親同士の収入格差で決まります。

  

たとえば、5歳の子を扶養範囲内の収入だった母が育てていて、父の年収(給与)が700万円の時、月々の養育費は月々8万円となりますが、この母に年収が500万円ほどあった場合、収入差が近づいていますので、月々の養育費は6万円ほどになります。

 

算定表で求められる養育費は、公立学校の教育を想定した費用です。ですので、私立学校の学費や受験のための塾・予備校などの高額な塾代については、この中から当然に賄わなければならないわけではなく、これとは別に「特別費用」として取り決めることがあります。

  

多くの場合、「特別費用」として取り決める学費や塾代などは、父母双方の収入比で分担するべきものとされますが、ケースバイケースです。算定表上の費用は当然に義務になりますが、特別費用は「子どものための費用」だからといって、およそ「他方に支払え」といえるものではなく、その学校・塾に行くことについて、他方の親に同意が得られていたかということが重要になります。