離婚の原因はさまざま。不倫もそのひとつですが、子どもがいる場合、どちらが親権を得るのか、争いになることもしばしば。世田谷用賀法律事務所の代表、弁護士の水谷江利氏が解説します。
原因はわたしの不倫…離婚女性、親権は諦めたほうがいいですか? (※画像はイメージです/PIXTA)

不倫した女性は親権はとれないのか?

親権を決めることで、最も争点となるところ

親権とはなんでしょうか。

 

一番影響が大きいのは、「居所の指定権」があることだと思います。これによって、片方の親と面会させる、させない、ということを決めることができる(本来そう言うわけではないのですが、事実上そうかのようになっている)ことが一番もめやすい点かと思います。そのほかは、預貯金や保険の受取ができる「財産管理」についての代理権があげられます。

 

親権と母親について

「母に親権がいきやすいのか?」という質問があることが多いのですが、母だから有利なのではなく、母だと、これまでの子どもをメインとして監護していることが多いからそういう結果になることがあります。

 

「母性優先」ではなく「継続性の原則」が妥当するものと、まだしも、そうでなくて不倫はしたけれど、これまでもメインで子育てしてきた母に軍配があがることが多くなるのです。

 

「母に不倫があると、親権をとりにくいか?」というご質問を受けることもありますが、それは必ずしも関係がありません。不倫の挙句に、子どもをほったらかしにしたなどの事情があればまだしも、そうでなく、不倫こそしたけれども、母としては頑張っていました、というのであれば、母の親権が失われるものではありません。

不倫されたら別れなければならないのか? 

不倫された側は2枚のカードをもつことになる

不倫は、典型的な離婚事由です。相手に不倫があると、裁判まで行けば「離婚事由あり」となり、離婚訴訟では勝訴できることになります。逆に、自分に不倫があると、どんなに請求しても相手が嫌だといえば、有責配偶者(悪いほうの配偶者)からの離婚請求は認められなくなります。

 

不倫をされてしまった配偶者の方は、①慰謝料の請求と➁離婚の請求の2つのカードを持つことになります。いずれも使ってもいいですし、使わない(=慰謝料も請求しないし、離婚もしない)としても良いのです。

 

慰謝料を請求するかどうか、離婚するかどうか、これらはすべて自分で決めればよく、不倫をされたからといってされた側がこうしないといけない、というものでもありません。

 

不貞慰謝料請求をする場合、注意すべきこととは

不貞慰謝料の請求をお受けする際は、以下の理解がない限り、お勧めしていません。

 

・(不貞慰謝料請求したことによって)配偶者を取り戻すことにはつながらないと理解している

・(不定慰謝料請求したことによって)配偶者との距離感は縮まらないと理解している

・(不貞慰謝料請求したとしても)配偶者が確実に帰ってくるという確信がある

 

逆に、不倫をした側からの離婚請求は、通りにくくなります。いわゆる有責配偶者からの離婚請求の論点です。

 

不倫をした側からの離婚請求でも、相手がOKしてくれる場合は、離婚が可能です。相手方が拒む場合には、離婚訴訟で決めることになりますが、この場合、長期間の別居、離婚より相手が酷にならないか、またさらに未成熟子がいないかを検討することになります。

 

別居の時期は3年とも5年ともいいますが、一般に子どもの年齢との兼ね合いで、決まることになります。