「老後2,000万円問題」が叫ばれて久しい昨今、定年後を見据えた資金形成は喫緊の問題となっています。今回は、FP事務所ストラットの代表である伊豫田誠氏が、「年金制度」「退職金制度」「自己資産」の3つの観点から、資金計画を立てるうえで押さえておきたいポイントについて解説します。
定年後の年金受給額に唖然…59歳・会社員の身に立ち込める「老後生活の暗雲」 (※写真はイメージです/PIXTA)

資金計画づくりのチェックポイント②退職金制度

次に確認したいのは退職金です。自分が勤めている会社に退職金制度があるのか無いのか、あるのなら退職時にいくら受け取れるのかを把握しましょう。

 

退職金制度は主に

 

・退職一時金制度
・確定給付企業年金制度
・企業型確定拠出年金制度(企業型DC)
・中小企業退職金共済

 

と4種類あります。また、受け取り方には一括で受け取る「退職一時金」と、分割で受け取る「企業年金」と2つの受け取り方があるので、自分が勤めている会社がどちらのパターンなのか、またはどちらも選べるのかを調べておくことが重要です。

 

一般的には、勤続年数が長期になるほど支給額が大きく上がっていきますが、実際の金額は会社の「就業規則」や「賃金規程」などに記載されていますので必ず確認しておきましょう。

 

令和元年の厚生労働省の調査によると、卒業から定年退職まで勤めた場合の退職金の相場額は、

 

<大企業>
大卒:約2,200万円
高卒:約2,000万円
(出所:厚生労働省 令和3年賃金事情等総合調査)

 

<中小企業>
大卒:約1,100万円
高卒:約1,000万円
(出所:東京都産業労働局 令和2年中小企業の賃金退職金事情)

 

となっています。

 

注意したいのは、退職金にも所得税と住民税が引かれ、一括で受け取る場合と、分割で受け取る場合とで金額が少々異なるという点です。ここも必ず確認しておきましょう。また会社の倒産等で、支給額の減額があったり、最悪の場合は受け取れないことがあるかもしれませんので、ここについてもしっかり確認しておく必要があります。

資金計画づくりのチェックポイント③自己資産

最後に確認することは、定年までに自己資産をどれだけ準備できるかです。以前、2019年に「老後資金2,000万円では足らない問題」が話題となりましたが、本当に足りないのか、実は足りるのかは、もちろん個々の状況で異なります。もし退職金と年金支給額の範囲内で生活できるのなら、過度な貯金は必要ないかもしれません。

 

総務省の家計調査によると、一般的な生活費の平均は下記になります。

 

<2020年度、65歳以上の夫婦のみの無職世帯>
・合計消費支出:224,390円

 

【内訳】
食料:65,804円
住居:14,518円
光熱・水道:19,845円
家具・家事用品:10,258円
被服及び履物:4,699円
保健医療:16,057円
交通・通信:26,795円
教 育:4円
教養娯楽:19,658円
その他の消費支出:46,753円

(出所:総務省統計局 令和2年家計調査年報家計収支編)

 

年金と退職金の範囲内で、老後生活費をまかなえればいいのですが、これは最低限の金額で、ゆとりある老後生活費は毎月約36万円とされています。また、いまのペースでインフレが進むと、20年後には物価は1.5倍に達している可能性がありますが、年金給付額は物価上昇に見合うだけの増額は望めないでしょう。

 

さらに懸念すべきは、貯金や退職金等の現金はインフレに比例して価値が下落するばかりか、使えば無くなってしまうし、使わなければ多くのお金を残してこの世を去ることになるかもしれません。