60階建てタワマンで悠々自適…エリート証券マンA氏
2022年夏、以前に飛び込み営業で会社に訪れた証券マンA氏から、久しぶりの電話が入った。また投資の営業かと思いながら電話をとると、「お久しぶりです……じつは相談したいことがあります!」と声を荒らげている。なにやら問題を抱えているようだった。
A氏は筆者と知り合った当時30歳の独身で、大手証券会社に勤めるエリート証券マンだった。3年ほど前に名古屋から東京へ転勤になったのだが、東京では順調に営業成績を積み上げ年収は900万円超え。ついに内勤のエリート街道に乗ったことを期に、西新宿に建つ60階建てタワーマンションの40階、間取り1LDKの物件(約5,500万円)を購入して暮らしていたそうだ。
最近、A氏のように独身でも住宅を購入する人は多い。超低金利が続く日本では、住宅ローンは金利0.4%程度で、さらに住宅ローン減税(A氏の場合約400万円)もあるため、賃貸よりも購入するほうがお得感が強い。
そんなA氏はタワマンで悠々自適な暮らしを楽しんでいたが、思わぬことが起きる。
「できちゃった婚」から急展開…破産の危機に
「独身エリート証券マン、タワマン40階暮らし」の肩書きは効果絶大で、交友関係は華やかになった。連日飲み会や会食に大忙しだったが、その甲斐あってか不思議と仕事の人脈には困らなかったそうだ。
A氏はこのまましばらく独身を続けていたいと考えていたが、ある日付き合っていた女性からまさかの告白があった。
「子供ができた。しかも双子みたい。」
いずれはこの女性と結婚しようと考えていたため、意外にもA氏に迷いはなかった。挙式はできないまま「できちゃった婚」で入籍を済ますと、妻は無事に出産。1年も経たぬうちにタワマンでの新婚生活がスタートした。
結婚生活は幸せそのものだったが、双子の育児と仕事に追われる毎日が数ヵ月続いたある日、突然とんでもない連絡が入った。妻の母親がクモ膜下出血で倒れたという。
妻の父親はすでに他界しており、親兄弟や頼れる親族はいない。妻は1人っ子のため、義母の対応は必然的に妻にのしかかる。義母はなんとか一命をとりとめたものの、寝たきりの要介護状態となってしまった。さらに義母の貯蓄や保険は少なく、千葉の借家で介護を受けるのも困難な状態であった。
A氏も、いままで散々華やかな暮らしをしてきたおかげで貯金は少なく、生命保険にも入っていない。証券マンだったが、株式投資も会社の規則で売買に制限があり、社内手続きの手間などもあって行っていなかった。
それでも、この状況にあってはそうはいっていられない。急いで知り合いの保険営業マンに連絡し生命保険に加入した。しかし、病気になってからでは保険に入りにくいことや、同じ保障内容でも若いうちから加入しておくと保険料が安いことは、その日まで知らなかった。
その後A氏は、妻から義母と同居して介護と育児をしたいと相談を受け、タワマンを売却。郊外の千葉に引っ越すことを決めた。
「これで万事休すか、この先どうすれば……」と思っていたA氏だったが、意外な展開があった。