(※写真はイメージです/PIXTA)

ドラッグストアにはさまざまな制汗剤が置かれています。こういった制汗剤を必要とする方、「汗」に悩んでいる方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。特に気になるのはワキの下の汗、仕方がないとあきらめている方も多いのかもしれません。どう対処すれればいいのでしょうか、専門医が解説します。

ワキ汗で悩む人は全体の5%ほどいる

▶少なくないワキ汗の悩み

 

「シャツのワキの部分に汗ジミができて人目が気になる」「ワキから汗が流れ落ちる不快感で勉強や仕事に集中できない」など、子供から大人までの調査では、ワキ汗で悩む方は全体の5%ほどいるという報告があり、決してまれではありません。

 

しかし、「今まで医療機関を受診して治療を受けたことがある」と回答したのは、症状がある方の6%程度にすぎません。男女別では、男性5%、女性9%と、特に男性は病院を受診されることは非常に少ないのです。

 

これまでは医療機関を受診していただいても、効果の高い手軽に行える治療が乏しかったという実情もありました。しかし、近年では効果の高い手軽な塗り薬が使えるようになり、悩める方は積極的に医療機関を受診してほしいとおすすめしています。

 

▶「汗っかき=多汗症」はいろいろ

 

汗が多い「多汗症」という病気(状態)全般について少し説明しておきます。

 

多汗症には全身の多汗である「全身性多汗症」と身体の一部に多汗の症状がある「限局性多汗症」があります。さらにそれぞれに、原因が明らかでない「原発性」と原因となる何らかの病気がもとにある「続発性」があります。

 

限局性多汗症が多くみられる部位は、わきの下、それから手のひらや足の裏です。顔や頭にみられることもあります。この原因としては、緊張などの精神的なもの、辛い食物の摂取、外傷後の末梢神経の刺激などがあります。緊張して手に汗握る、という経験した方も多いと思います。

 

しかし、多くは原因がわからない「原発性」なのです。

 

▶わきの下には2種類の汗腺がある

 

汗は皮膚にある汗をつくる腺「汗腺」でつくられて排出されます。汗腺には2種類あります。体のどこにでもあるのが「エックリン汗腺」です。もうひとつ、限られた部位のみにあるのが「アポクリン汗腺」です。アポクリン汗腺はわきの下、外陰部などにのみあり、わきの下の臭い(ワキガ=腋臭症〈えきしゅうしょう〉)の原因になります。

日常困るほどのワキ汗を診断する基準

▶日常困るほどのワキ汗:原発性腋窩多汗症

 

原因がない、日常困るほどのワキ汗は、正式には「原発性腋窩(えきか)多汗症」といいます。「汗の量が多くなる原因となる病気や障害がないにもかかわらず、多量のわき汗に悩まされる状態」です。

 

制服を着用する、対人関係に影響するような職業の方では、日常の活動にも影響が出たり、精神的にも悩んでしまったり、さまざまな面で悪影響を及ぼしてしまうこともあります。

 

これを診断するための基準があります。

 

日常生活に支障をきたすほどの多量のわきの汗が、明らかな原因がないまま6か月以上みられ、次の6つの症状のうち2つ以上が当てはまる場合に診断されます。

 

原発性腋窩多汗症の診断基準 (2項目以上あてはまること)

 

・最初の症状がでるのが25歳以下であること

・左右両方で同じように発汗がみられること

・睡眠中は発汗が止まっていること

・1週間に1回以上多汗の症状がでること

・家族にも同じ疾患の患者さんがいること

・わき汗によって日常生活に支障をきたすこと

 

おそらく、日常ワキ汗が気になっている多くの方が、この診断基準に当てはまるのではないでしょうか。調査によると平均の発症年齢は19.5歳とされます。10代でも実は悩んでいる、という方も多いのです。

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。