長寿サプリ「NMN」の上位互換…長寿研究で再注目の「日本が90年代に発見した物質」【医師が解説】

前編 ~基礎研究~

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長寿サプリ「NMN」の上位互換…長寿研究で再注目の「日本が90年代に発見した物質」【医師が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

『老化は治る』。今、医学の常識が一転しつつあります。WHOが2019年に採択した「IDC-11(国際疾病分類)」でも、明確に“老化”の概念が盛り込まれました。老化とは万病に共通する驚異的なリスク因子であり、もはや、人類が克服すべき治療対象の疾患と定められているのです。銀座アイグラッドクリニック院長・乾雅人医師が、今注目の「5デアザフラビン」を前編・中編・後編に分けて解説します。

日本に知財として眠る「NMNの上位互換」

前項『遺伝子レベルで見る“老化の本質”』では、長寿サプリとして話題のNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)を紹介しました。主機能は二つ、①ミトコンドリアの活性化、②サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の活性化です。結果、「老年症候群」と呼ばれる老化に随伴する各種疾患(糖尿病や高血圧、脂質異常、認知症、筋力低下、骨量低下、活動性低下など)の予防・改善が期待されています。

 

ミトコンドリアは生体エネルギーの95%を生成する細胞内小器官で、車で言うならエンジン、機械で言うならモーター、産業で言うなら発電所に相当します。予算やマンパワー、エネルギーなど、上限を超えて何かを行うことはできません。まずは最大出力を上げる、確保することが重要です。「ミトコンドリアの活性化とは、生きていくためのエネルギー源の確保に他ならない」と説明すれば、その重要性が伝わるかと思います。

 

もう一つの機能、サーチュイン遺伝子については、別名「長寿遺伝子」の通りです。この名前は、酵母という単細胞モデルでsir2遺伝子の活性化により寿命が30%延長した事実に由来します。このsir2に対応する(ホモログと言う)のが、ヒトではsirtuin1です。類型は他に6種判別しており、sirtuin1~7をまとめてサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)と呼んでいます。

 

実は、その上位互換の物質が、本邦に知財として眠っていました。世界最強のミトコンドリア活性化物質、世界最強のサーチュインブースター。自然界に存在し、1998年には国内論文でNAD+やNADP+に次ぐ、第三の存在(ピリミジンヌクレオチド)として記載されている「5デアザフラビン」こそが、その正体です。

5デアザフラビンとは?

5デアザフラビンとは文字通り、フラビン(ビタミンB2)から第5位にあるアザ基(N基、N=窒素元素)をデアザ置換した(取り除いた)ものです。デカフェコーヒーの“デ”は“デカフェイン”を意味し、カフェインを取り除いたものを指します。

 

化学式上の基本構造はフラビン(ビタミンB2系)でありながら、実際には生体内でNAD+(ビタミンB3系)と同じ機能を有することになります。専門的には、電子論(H2Oは二つのH+と一つのO2-から成る。このように、極性と呼ばれる電子の偏りが存在するのが普通)に基づくのですが、ここでは割愛します。

 

ビタミンB3骨格はベンゼン環が一つで化学的に不安定であるのに対し、ベンゼン環が三つ重なったイソアロキシジン環を有するビタミンB2骨格はより頑健です。自動車で例えるなら、ビタミンB3骨格(NMN/NAD+)は軽自動車みたいなもの、ビタミンB2骨格は頑健なドイツ車、といったイメージでしょうか。基本骨格が頑健であればあるほど、周辺領域のカスタマイズ(化学的には〇〇置換)の余地が生まれるわけです。

発見から数十年を経て発揮された「基礎研究の真価」

昨今のNMN(NAD+の前駆体、生体内でNAD+に変化)ブームを契機に、この5デアザフラビンが再注目されます。NMNでは不可能な、数百種類もの化学置換を検証しました。第〇位の基に対して10種類の置換が可能として、第〇位、第△位、第□位の3ヵ所に対して置換基を検証すれば、10^3=1000通りの物質がシミュレーションできます。

 

この中から、実際に10種類のサンプルを製造し、総合的に最も優れたものが「TND1128」と名称されました。これが、ミトコンドリアの活性化がNMNの数十倍強力と特許承認済であり、サーチュイン遺伝子の活性化も数倍強力な物質の正体です。

 

TND1128は論文でも検索可能であり、現在、世界最先端の研究所で更なる検証が成されています。他のサンプルTND〇〇も、別の研究機関で検証が開始されており、5デアザフラビンはまさに将来のノーベル賞候補の研究対象なのです。

計測不可能な教育・研究にこそ投資をせよ

いかがでしょう。5デアザフラビン(TND1128)にまつわる研究の壮大さが伝わるのではないでしょうか。しかしながら、この世界を揺るがす知財は、1998年には国内論文ですでに発表されて以降、社会実装されてきませんでした。数十年の時を経て、基礎研究の価値、真価が発揮される良い事例です。

 

重要なのは、研究を開始した当初には、現在のような壮大なスケール感が考慮されていなかったことです。ゲノム解析領域の解析技術の革新、遺伝学に基づくサーチュイン遺伝子の発見、NMNにまつわるマーケティング等の各種要因が重なり合って、現在の世界観に至っています。読者の方に伝えるとすれば、「真価が計り知れない教育や研究にこそ、一定額の予算を投資する価値がある」ということです。

 

本邦には、5デアザフラビンのような“眠れる知財”が多数存在します。これらを知財のままで終わらせない。基礎研究で得られた知財を、社会実装に導く必要があります。それこそが、医師のみが担うことのできる、臨床研究の役割です。そろそろ、『医師という社会資源をいかに活用するか』を国策として議論しても良い時代なのではないでしょうか。

 

次稿は中編として、臨床研究の観点から、日本の医師こそが人類社会に果たすべき社会的使命について取り上げます。

 

『人類は老化という病を克服する』。

 

 

乾 雅人

医療法人社団 創雅会 理事長

銀座アイグラッドクリニック 院長

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