(※写真はイメージです/PIXTA)

40代を過ぎると、膝の痛みを訴える人が増加します。しかし、「膝の痛み」とひとことでいっても、原因や疾患はさまざま。なかには、放置すると歩行困難になったり、人工関節の置換術が必要になったりするケースも……では、一体どのような痛みに注意すればいいのでしょうか。世田谷人工関節・脊椎クリニックの塗山正宏先生が解説します。

膝だけではない…全身の関節で起こる「関節リウマチ」

最後に紹介するのが「関節リウマチ」です。関節リウマチは手指、手首、肩、股関節など、さまざまな関節で起こりうる疾患です。はっきりとした原因はまだ判明していませんが、細菌やウイルスの感染、ストレス、喫煙、出産やけがなどが原因となり、発症すると考えられています。

 

いつ、誰がかかってもおかしくない身近な「自己免疫疾患」

関節リウマチは、簡単にいえば免疫の異常です。免疫細胞は通常、外部から細菌やウイルスが体に侵入しないように、防御する働きを担っています。

 

しかし関節リウマチになると、免疫の働きに異常が起こり、自分自身の細胞を攻撃してしまうのです。こうした疾患を「自己免疫疾患」といい、関節リウマチはその代表格です。

 

関節リウマチにかかりやすいのは圧倒的に女性が多く、年齢別に見ると、30〜50代が好発時期です。厚生労働省の発表によると、部位を問わず、関節リウマチの罹患率は人口の0.6〜1%にのぼり、患者数は60〜100万人と推定されています(※)。

※ 第1回 厚生科学審議会疾病対策部会 リウマチ等対策委員会資料

 

つまり、100人に1人が関節リウマチを発症するともいえます。決して珍しいものではなく、いつ、誰がかかってもおかしくない疾患なのです。

 

膝の関節リウマチは、滑膜に炎症が起きます。滑膜とは、関節の内側をおおう厚みが1mmにも満たない薄い膜です。この滑膜から関節液が分泌され、軟骨が擦れ合うときの潤滑油になったり、軟骨へ栄養を補給したりすることで、軟骨の働きをサポートします。

 

しかし関節リウマチになると、滑膜に炎症が起こって腫れ上がり、関節腔には関節液がたまってしまいます。関節リウマチというと患部が腫れるというイメージを持っている方も多いと思いますが、これが、関節リウマチ特有の「腫れ」の原因なのです。

 

腫れあがった滑膜は、やがて軟骨部分や靱帯を壊し、さらに軟骨以外の骨までも破壊してしまいます。これを「骨びらん」といいます。

治療効果を高めるには、早期発見・早期治療が重要

関節リウマチを発症すると、関節がこわばったり、水がたまったり、痛みが生じたりします。よく変形性膝関節症と間違われやすいのですが、変形性膝関節症は膝の内側に変形が見られる一方、関節リウマチの場合は、膝の内側と外側に変形が見られるのが特徴です。

 

関節リウマチは難治性の疾患であり、「全治をめざす」というよりは「寛解(全治とはいえないが、病状が治っていること)をめざす」のが一般的です。以前に比べて薬も進化し、寛解状態へ導くことが可能なケースは飛躍的に増えました。

 

治療では薬物療法と理学療法を組み合わせ、薬物療法では、鎮痛作用のある「非ステロイド系抗炎症薬」、日常労作の改善に有用な「副腎皮質ステロイド」、骨びらんの進行を遅らせる「抗リウマチ薬」、関節破壊の進行を抑制し、関節機能を改善・正常化する「生物学的製剤」などを使用します。

 

特に「生物学的製剤」の進化はめざましく、関節リウマチの炎症を引き起こす炎症蛋白を抑え込む薬も開発されています。

 

しかし、こうした薬の効果を高めるには早期発見・早期治療が肝心です。関節の痛み、変形、腫れ、強ばりなどが見られる場合はできるだけ早くかりつけの医師に相談するか、あるいは、リウマチ科や、膠原病科やリウマチ科を標榜している内科・整形外科を受診しましょう。

 

まとめ

今回紹介したように、膝の疾患にはさまざまなケースが考えられます。関節リウマチのように、放置するとどんどん症状が進んで、治療が難しくなる疾患もありますし、半月板損傷のように、進行すると変形性膝関節症を併発するものもあります。

 

もし、膝の痛みや違和感が2週間程度続くようなら、医療機関を受診することをおすすめします。

 

 

塗山 正宏

世田谷人工関節・脊椎クリニック

 

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