ピークはすぎた?…新型コロナの「いま」
新型コロナウイルス感染症は、オミクロン株(第7波)が8月にピークを越えてから、収束に向かいつつあります。
10月からはオミクロン対応株ワクチン接種も本格化。「withコロナ」の政府政策のもと、9月26日からは全例の報告から、基本的には年齢層と人数の報告に簡略化されました。
その一方で、第7波ピーク時には東京都で連日4万人の感染者が発生するなど、昨年のデルタ株流行時と比較しても感染者数は増加しています。
そのほとんどは軽症相当ではありましたが、ワクチンの接種の有無にかかわらず感染者数増加に比例して「long COVID」と呼ばれる後遺症患者数も増加しています。後遺症診療を行える医療機関が少なく、患者さんも受診先に困っている現状があります。
しかし、新型コロナウイルス感染症後遺症の治療に関しても、少しずつではありますが、効果的な治療方法が確立されはじめています。
今回は、新型コロナウイルス感染症後遺症が疑われる患者さんに対して、現在医療機関がどのような対応をしているか解説していきます。
対症療法では不十分…「コロナ後遺症」に必要なケア
オミクロン株による後遺症として圧倒的に多いものは、倦怠感(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)です。
このほかにも、長引く咳や呼吸困難、微熱・頭痛、気分の落ち込みをはじめとした抑うつ症状・不安症、思考力・集中力の低下(ブレインフォグ)、動悸・胸痛、嗅覚・味覚障害といった症状が挙げられます。
筆者の病院において初診時「後遺症」として受診された人には、現在の症状やコロナ罹患時の症状・重症度に加えて、現在の就業状況や精神面に関しても把握するようにしています。
これまで300人以上の「新型コロナウイルス感染症後遺症」を診療してきてわかることは、後遺症に悩む人は 「仕事を解雇になりそうだ」 「療養休暇はいつまでとれるか」 「家事がいつになったら家事が普通にできるようになるか」 など、多くが生活維持に対して不安を抱いているということです。
後遺症の診療は身体(器質的疾患)に加えて、心理的・精神的な面と社会的な立場など「3つの柱」による多角的なアプローチが重要です。なかでも特に、心療内科的な知識・見識が必要となるケースが多くありました。
また、診療を行う我々にとって重要なことは、新型コロナウイルス感染症の後遺症であるかどうか見極めるために、診察および検査をしっかりと行うことです。
新型コロナ感染後に「倦怠感が強い・やる気が起きない」ということで受診された患者さんであっても、実際には血液疾患(急性白血病・骨髄異形成症候群)や内分泌疾患(甲状腺機能低下症、副腎皮質機能低下症)、また長期間の在宅ワークによる生活習慣病の悪化(インスリン治療を要する2型糖尿病)や神経疾患であるケースもあります。
このような疾患ではないことを慎重に確認し、「コロナ後遺症」と決めつけて他疾患の発見に遅れることがないよう、留意が必要です。
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