2022年度も後半戦突入。この10月には多くの商品が値上げになったほか、医療費や年金の制度も変更となりました。75歳以上の後期高齢者のなかには、医療費負担が重くなった人たちも。収入が限られるなかの負担増は大変……と思いきや、そんな声はあまり聞こえてきません。みていきましょう。
年金17万円超の「勝ち組・おひとり様高齢者」…10月からの「医療費負担アップ」も余裕でいられるか? (※写真はイメージです/PIXTA)

医療負担増で勝ち組高齢者の家計は赤字になる!?

単身で年金収入200万円以上というと、月17万円を超える年金を手にしていたら、今回の医療費負担増の対象になる可能性があるということ。厚生労働省『令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金受給者の平均受取額月額14万6,145円。65歳以上に限ると、男性平均が17万0,391円。平均的な受給額の75歳以上・おひとり様の元会社員であれば、対象になる可能性が高いというわけです。一方でこれくらいの年代だと「会社員+専業主婦」という夫婦が多く、「元会社員の年金額(17万円×12)+専業主婦の年金額(6.5万円×12)」<「320万円」ですから、今回の医療費負担増は対象外の可能性が高いかもしれません。

 

今回、医療費負担率アップの対象となる高齢単身者の平均的な家計は下記の通り。調査は65歳以上を対象としていますが、仮に年金月17万円なら、手取り年金は月15万3,000円ほど。月々1万6,000円ほど、黒字になる計算です。

 

【単身65歳以上の平均的像】

持家率:80.2%

家賃・地代を支払っている世帯の割合:15.7%

消費支出:13万7,210円

<内訳>

食料:3万6,972円

住居:1万3,310円

光熱・水道:1万2,741円

家具・家事用品:5,264円

被服及び履物:3,341円

保健医療:8,765円

交通・通信:1万3,905円

教育:7円

教養娯楽:1万3,004

その他の消費支出:2万9,900円

 

出所:総務省『家計調査 家計収支編』(2021年)

※内訳はそれぞれの平均であり、すべて足しても消費支出(平均)とは一致しない

 

また75歳以上の医療費は平均70万4,000円、月換算5万8,000円ほど*。医療費負担が1割から2割へと増加すれば、月々6,000円ほど医療負担は大きくなりますが、そちらを足してもなお、家計は黒字を保てる水準です。もちろん、年金収入しかないなかでの負担増は精神的にも大変ではありますし、人によって事情はさまざま。それでも多くは「それでも年金だけで暮らせる」というような余裕のある生活を続けることができそうです。

 

*厚生労働省『令和元年度 国民医療費の概況』より

 

高齢化による社会保障費増、その費用をどのように捻出するのか、日本の大きな課題ですが、今回の「一部の後期高齢者の医療費負担増」に関しては、それほど影響のないところで負担増とした印象でしょうか。ただ社会保障の財源確保は急務。所得制限なしで後期高齢者は原則医療費2割負担という世界が、現役世代が高齢者となる時代では当たり前かもしれません。いまのうちに、あらゆる負担増に向けて資産形成を進めることが、唯一の防衛策だといえそうです。