(※写真はイメージです/PIXTA)

受動喫煙は人体に多大な悪影響をおよぼします。特に小さな子供が受動喫煙をするとさまざまな病気を発症するリスクが大人よりも高くなるほか、妊婦の受動喫煙で早産や流産のリスクが高まると、きづ川クリニック小児科医の米田真紀子氏はいいます。乳幼児が受動喫煙してしまうことの危険性について、詳しくみていきましょう。

受動喫煙の影響

乳児への影響

1歳未満の乳児が受動喫煙することにより、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが上がるという研究結果が多数あります。たとえば、両親が喫煙者の場合だと、子供がSIDSで亡くなる確率が5倍から10倍以上になるともいわれています。

 

母乳中にもニコチンが溶け出すため、喫煙者の母乳を飲んだ赤ちゃんがニコチン中毒になってしまうケースもあります。

 

乳児以降の影響

受動喫煙により、さまざまな気道の病気のリスクが上がります。気道感染症が悪化しやすくなることで肺炎や気管支炎になる可能性が高まり、母親の喫煙で約60%、父親の喫煙で約30%もリスクが上がるとの研究もあります。

 

また、気道感染以外にも、中耳炎の発症リスクは2倍から4倍になるという報告もあります。虫歯や歯周病のリスクもあがります。

 

急性感染症だけでなく、長引く咳や、気管支喘息、アトピー性皮膚炎など慢性の病気の発症要因にもなります。こうした慢性の病気になった場合も、一般的な治療が効きにくく、治療抵抗性となります。

 

さらには、すぐに発症するわけではありませんが、発がんリスクは確実に上がります。有毒ガスによる血管障害も起こり、将来的に若年から動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞を起こすリスクが高くなります。

 

体重当たりで有害物質をより多く取り込んでしまう子供は、その後の長い人生のなかで、こうしたさまざまな病気を発症する可能性が大人よりもずっと高くなります。

 

たとえば、20歳までに喫煙習慣がある場合、男性で8年、女性で10年も寿命が縮むといわれています。若年からの受動喫煙も同様の危険性があると考えてよいでしょう。

 

また、忘れてはならないのが、乳幼児のタバコ誤飲です。親が吸ったタバコの吸い殻を口にしてしまったり、タバコの火を消した缶などに入った液体を飲んでしまったりする事故があとを絶ちません。

 

特に、タバコの成分が溶け出した液体は、少量であってもすぐに吸収されて致死量に達してしまう危険があります。

子供をタバコの煙から守ってあげることが大切

以上、さまざまなタバコのリスクを挙げました。客観的に考えればお金を払って毒物を摂取して寿命を縮めているわけですが、わかっていてもたばこをやめない、やめられない人がたくさんいます。

 

たばこの害についてはさまざまな研究結果が出てきているとはいえ、まだまだ全容がはっきりと見えないからです。たばこを吸わずともがんになったり病気になることはありますが、だからといって喫煙をしてもいいという理由には決してなりません。

 

大人がどうしてもタバコをやめないのは仕方がないことかもしれません。でも、せめて子供たちは、われわれ大人が受動喫煙から守ってあげなければならないと思います。

 

そして、できればお父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんにはなるべく健康で長生きしてほしいものです。

 

 

米田 真紀子

京都きづ川病院/きづ川クリニック

小児科医

 

 

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