所得と貯蓄額は比例する……通常そのように考えてしまいそうですが、「なぜかお金が貯まらない」と悩んでいる高所得者も少なくありません。今回、FP Officeの髙屋亮氏が、世帯年収が同じある2組の夫婦の事例を取り上げ、お金が「貯まる人」と「貯まらない人」の違いを解説します。
世帯年収1,000万円でも…お金が「貯まる人」と「貯まらない人」の決定的な差 (※写真はイメージです/PIXTA)

貯蓄のコツ1.「現状維持バイアス」を逆手に取る

まず第一に「現状維持バイアス」という壁が現れます。人は未知や未経験なものに不安を感じ、受け入れを拒否してしまうという心理です。

 

Aさんは「あと月7万円も貯蓄に回したら、生活が窮屈では…」と不安を感じていました。

 

しかし、ここは(無謀でない範囲で)「まずやってみる」ことがポイントです。なぜなら、人は「未知への変化」も、しばらく続けば「既知の習慣」に変わる能力が備わっているからです。

 

社会保険を例に取りましょう。会社員の方は、月々の給料から厚生年金に約9%、健康保険に約5%源泉徴収されています。月収(※正しくは標準報酬月額)40万円の場合、年金に3万6,000円+健保に2万円程度で合計6万円弱を天引きされているのです。

 

筆者はここで、Aさんに変な質問をしてみました。「『お金に余裕がないから社会保険を解約しよう』と考えたことがありますか?」

 

当然「ありません」と返事が返ってきます。これは、Aさんが社保の天引きを既知の習慣として受け入れているからです。

 

また、長く続けた社保は「現状」のセーフティネットですから、もし解約できるといわれてもいまさら失うことには抵抗感があるでしょう。(これも「現状維持バイアス」といえます)

 

Aさんが始める月7万円の積立も、徐々に「変えたくない現状」に育てることが秘訣です。

貯蓄のコツ2.目標を「実現可能な額」に設定する

「始めたはいいが続かない」……。こういった場合、そもそも設定した目標が高すぎることがあります。

 

「収入―貯蓄=支出」は魔法の公式ではありませんから、根拠もなしに設定するとあっさり挫折することになってしまいます。

 

学生時代から節約が身についていたBさんは、社会人になったあともお昼は食堂、夜は自炊と節約に努めていました。それでも、年収300万円台だった初年度は収支がギリギリ。Bさんは年度の昇給に沿って、少しずつ貯蓄枠をつくることで先取り貯金に成功しました。

 

机上だけで先取り貯金を設定しても現実の支出には波があります。家計を点検し、「支出が多めの月でも続けられる範囲」から始めることが大切です。