非認知能力から考える“子供のおこづかい”について
コロンビア大学の心理学者ウォルター・ミシェルは、スタンフォード大学のビング幼稚園に通う200人の4歳児を対象にあるテストを実施した。これがかの有名な「マシュマロ・テスト」である。
マシュマロ・テストは、非認知能力の1つである自制心を測るテストとして知られているが、「目の前にあるマシュマロを食べずに待てれば、もう1つマシュマロをあげる」という形で、子供の行動を観察する研究であり、その結果に応じて、将来子供達がどのように育っていくのかまでを追っている有名な研究である。
本テストは、3分の1の子供は食べずに待ち、3分の2の子供は食べてしまうという結果となった。その後の調査で、食べるのを待つことができた、自制心を発揮した子供たちは下記のように育っていったということがわかった。
・中学校では先生といい関係をもち、高校での偏差値も高い
・大学を4年間で卒業して、正社員の職を得る確率が高い
最近では、非認知能力を高めるためのさまざまな研究が始まっている。慶應大学教授の中室牧子氏は、著書『学力の経済学』のなかで、下記紹介をしている。
非認知能力を高める最も有名な研究の一つに、小学校3年生を対象にして自制心や忍耐力を伸ばすために行なっているトルコ政府のプログラムがある。ケーススタディとゲームによる週2時間・8週間で、将来の自分の姿を想像し、将来に備えていまは我慢することの重要性を理解させるプログラムである。
具体的には、タイムマシン(「ゼイネップのタイム・マシン」)を自作させて、将来のある1日に起こっていることを絵に描いたりディスカッションしたりして想像させる。
たとえば、子供たちが「自転車が欲しい」といったとする。タイムマシンを使って将来に行くと自転車を手にしている。その自転車を使って今日何をして遊ぶかをみんなで考えて、自転車が手に入れられたときの高揚感を認識させる。
その一方で、いま自分が使えるお金には限界(予算制約)があるので、小遣いをどう使うかについての意思決定も求められることを知る。将来を想像させるこのワークショップを経験すると、今日の消費行動が大きく変わり、将来に向けて貯蓄するようになる。
つまり、このワークショップを経験しない子供たちは、菓子やおもちゃを買ったりすることに今日のお金を使ってしまうが、将来のことを想像するグループに割り当てられた子供たちは将来に向けて貯蓄をするようになる。