現役を引退した老後、年金だけで暮らしていけるかというと難しく、現役時代に不足分を貯蓄しておくのがセオリー。しかし万全のつもりで準備していても「老後資金が足りない!」という事態に直面するケースも。みていきましょう。
老後資金2000万円あるから大丈夫…用意周到の老夫婦が驚愕する「老人ホーム請求額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

介護が必要になったら…万が一が想定されていない老後資金

ただ老後はシミュレーション通りにいくとは限りません(現役時代の生活でもそうではありますが)。「2,000万円あれば大丈夫」といったシミュレーションは、あくまでも健康に30年間暮らすことを考えたもので、年を重ねるごとに支出が大きくなる医療や介護の費用については加味されていないのです。

 

厚生労働省『令和2年度 介護保険事業状況報告(年報)』によると、2020年前期高齢者(65~75歳未満)は1,756万人、後期高齢者(75歳以上)は1,833万人、合計で3,589万人。つまり日本にはこれだけの高齢者がいます。

 

そして要介護(要支援)認定者数は、2021年3月末時点で682万人。第1号被保険者に占める要介護(要支援)認定者の割合は18.7%。さらにサービス受給者数は月に575万人。高齢者の5人に1人程度が多かれ少なかれ介護を必要とし、6人に1人程度が実際に介護サービスを利用しています。また施設介護サービス受給者は、2020年度累計で1,148万人。1ヵ月あたり平均で、介護老人福祉施設が56万人、介護老人保健施設が35万人、介護療養型医療施設が1.8万人、介護医療院が3.2万人、総数96万人となっています。

 

このようにみていくと、「老後30年健康に生活する」という大前提では、老後の備えは不十分だといえるでしょう。

 

たとえば老人ホームへの入居を考えてみましょう。入居を検討するにあたって見るべき費用は、終身利用する権利を取得する目的に対し支払う「一時入居金」と「月額費用」。一時入居金は施設によって大きく異なり、0円~数百万円、数千万円といったところも。月額費用には「家賃」「管理費」「食費」「介護保険サービスの自己負担分など」「個人で支払う費用」が含まれ、10万~30万円程度の施設が多くなっています。

 

月額利用料だけで判断すると、思わぬ出費で驚くことになります。月額費用には食事代は別契約で含まれなかったり、介護保険1割負担分は含まれなかったりと、表記方法はまちまち。検討段階できちんと確認しておかないと、表記の倍も請求されるというトラブルもしばしば。

 

老人ホームの平均入居期間は1.5~4年程度といわれていますが、なかには10年近くも入居するケースも珍しくはありません。「老後は2,000万円程度あれば大丈夫だろう」という想定には、介護等が必要になったときの費用は含まれていないでしょう。最低限と考えるプラスαを目指して資産形成を進めることが、老後の安心につながります。