「初めての投資」は5人に1人が「60代や70代」
老後のために……堅実に考えているならいいのですが、一気に2,000万円もの大金を手にしますから、甘い誘惑も多いもの。
——ただ預貯金しているだけでは、目減りしてしまいます。運用しましょう
そんな営業を受けることもあるでしょう。定年してから「投資デビュー」というのも、決して珍しい話ではありません。一般社団法人投資信託協会『60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査―2021年(令和3年)』によると、退職金使い道で最も多かったのが「預貯金」で59.3%。「日常生活費への充当」25.6%、「旅行等の趣味」21.7%、「住宅ローンの返済」20.8%と続き、「資産運用のための金融商品の購入」が20.3%と続きます。さらに投資経験者に「初めて投資した年齢」を聞いたところ、「60代」が17.8%、「70代以降」が2.7%。高齢者になってから「初めて投資をした」という人が5人に1人という状況です。
【投資経験者に聞いた「初めて投資した年齢」】
20代以前:8.6%
30代:22.5%
40代:20.8%
50代:24.0%
60代:17.8%
70代以降:2.7%
覚えていない:3.6%
出所:一般社団法人投資信託協会『60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査―2021年(令和3年)』より
また「投資をしたきっかけ」として、「自分から自然と興味を持った」が最も多く35.7%。「家族や友人、知人に勧められた」23.6%、「金融機関から勧められた」19.7%と続きます。「勧められるがままに退職金で投資デビュー」は、それほど珍しいことではないように思われます。そして「投資理由」として「預貯金の金利が低いから」が最も多く48.2%。
——預貯金の金利は低いので
——この金融商品なら安全ですよ
そんな営業を受けたなら、「それなら退職金全額を……」と退職金のすべてを投資にまわしてしまう人がいてもおかしくはありません。そもそも諸外国に比べて、日本人は金融リテラシーが低いと問題視されています。 金融広報中央委員会『金融リテラシー調査(2022年)』によると、「金融知識に自信がある人」(「とても高い」と「どちらかといえば高い」との合計)の割合は12%。米国の71%と比べて、ひと際低くなっています。またOECD加盟10ヵ国と正誤問題の正答率で比較すると、日本人は知識としては「インフ レ」「分散投資」、行動面では「お金への注意」で見劣りするとしています。
知識も低いのに2,000万円もの大金を投資に回したら(知識が低いからこそ、退職金のすべてを投資にまわせるという声もありますが)、大きな損失を被る可能性が高いことは、少しでも投資を知っている人であれば想像がつくでしょう。老後の資金として、多くが退職金をあてにしています。投資を考えるのであれば、まずはどれくらいのリスクなら許容できるか、しっかり検討することが重要です。