知らされていなくても義母のための借金を肩代わりしなければならない。「家族信託」をめぐる法律の落とし穴【弁護士が解説】

知らされていなくても義母のための借金を肩代わりしなければならない。「家族信託」をめぐる法律の落とし穴【弁護士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

「家族信託」(民事信託)とは、自分が将来病気や要介護になる可能性を考慮し、保有する不動産や預貯金などの管理・処分を信頼のおける家族に任せるという、財産管理の方法です。遺言書以上に多様な承継の仕方が定められるなど、相続における多様なニーズの受け皿としての側面もあり、今後ますます需要を高めていくことが予想されます。近い将来、誰しもが身近になるかもしれない「家族信託」を、民事信託に特化した法律事務所の所長である金森健一弁護士が、具体的な事例をもとに解説します。

【ポイント】法律とは異なる特約を結ぶ「別段の定め」

受託者が債務を負ったまま亡くなると、受託者の相続人がその債務を返済する責任を負うことになります。しかも、その相続人が「信託財産」を売却するなどして借金を返済することはできません。

 

受託者は、受益者のために財産管理を行うべき立場にありますが、自分の相続人にも影響を与えます。とくに、借入等により債務を負うときは、受託者は自分の相続人となる人にもそのことを話しておきましょう。

 

イタ子さんのケースは、信託契約書に特約が無かったものと仮定し、信託法という法律の定めに従った場合の説明をしました。

 

しかし、信託法は、「別段の定め」といって、法律とは異なる内容の特約をすることを認めています。特に、金融機関から融資を受けることを前提とする信託契約は、そのような特約がなされるのが普通です。

 

そして、その特約は、信託契約書に書かれています。何か起きたときは、まず信託契約書を確認するようにしましょう。

 

もっとも、信託契約書の内容を理解するのは、なかなか難しいこともあります。読み違えて、後からトラブルになるおそれもあります。迷ったときは、信託について詳しい弁護士のアドバイスを受けるようにするのがよいでしょう。

 

 

金森健一

弁護士

金森民事信託法律事務所所長

駿河台大学法学部特任准教授

民事信託の別段の定め 実務の理論と条項例

民事信託の別段の定め 実務の理論と条項例

金森 健一

日本加除出版

信託法における「別段の定め」と、「定め」ることができる内容のすべてがこの一冊に。「ファミリービジネスの維持」「不動産賃貸の事業承継」「未成年の受益者」「障がい者の『親なき後問題』」「金融機関との関係」…民事信託…

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