国際情勢が緊迫するなか、日本でも有事の現実味が増しているなか、国防の要となるのが自衛官です。その存在に関心が寄せられるなか、その待遇面にも注目が集まり、議論が交わされています。みていきましょう。
初任給、大卒で22万円だが…これでは日本を守れない「自衛官」の少なすぎる給与額 (※写真はイメージです/PIXTA)

一般的な国家公務員よりも「ちょっと厚遇」の自衛官…それで日本を守れるか?

日本を取り巻く安全保障環境が急変するなか、自衛隊の防衛装備品などの更新に多くの予算を割くようになっています。一方で、自衛官への給与などの人件費や、自衛官の住居などに対する費用は圧縮傾向にあるといいます。

 

そもそも自衛官は、特別職の国家公務員であり、民間企業にあたる俸給が支給されます。2022年度の募集要項によると、大学や大学院卒業者・見込み者を対象とした一般幹部候補生の場合、大学卒業程度試験に合格で初任給は22万6,500円(修士課程修了者等以外)。大学院卒業程度試験に合格すると24万7,500円です。

 

また選抜試験によって幹部に昇任することもある、一般曹候補生の初任給は、高卒で17万9,200円、大卒で19万8,100円。さらに任用期間が2~3年単位で区切られている自衛官候補生の場合、最初の3カ月間は14万2,100円。その後2士に任官となると、高卒であれば17万9,200円、大卒であれば19万8,100円となります。

 

厚生労働省『令和3年賃金構造基本統計調査』によると、新規学卒者の給与は、高卒で17万9,700円、大卒で22万5,400円、大学院卒で25万3,500円。自衛官の初任給は民間企業と同程度といえるでしょう。

 

一方、基本給にあたる俸給は、「階級」と勤続年数や仕事への評価である「号俸」によって決まり、号俸は1年に4号ずつ上がるのが一般的です。各階級の俸給には幅がありますが、民間企業でいう係長クラスは曹や士で、月額23万~42万円ほど(曹長)、課長クラスは尉官にあたり、月額28万~45万円ほど(1尉)。部長クラスは佐官で、46万~55万円ほどになります(1佐(1))。

 

さらに年4カ月分ほどの期末・勤勉手当、扶養手当のほか、災害派遣手当や飛行手当など、自衛隊ならではの手当も加算されます。40代のモデル年収として、准曹自衛官で約640万円、幹部自衛官で約870万円ほど。特殊な職務から、一般的な国家公務員よりも給与は高いといえるでしょう。

 

しかし冒頭の世論調査のように、身近な人に「自衛官になれば」と気軽に勧めることができるほど厚遇といえるでしょうか。国際情勢が緊迫化しているなか、どこか遠い国の話に思えた「有事」という言葉が、ずいぶんとリアリティをもって語られるようになっています。そのようななか、国家公務員よりも少しばかり良い待遇というのが適切なのか。議論の余地があるでしょう。