〈資産価値〉という魅力が生んだ悲劇…「投資家オーナー」の問題
修繕積立金の問題が懸念される一方、住民の多くは資産に余裕のあるお金持ちであり、これら維持管理費の高騰にも対応可能です。しかし、管理がしっかりと行われ、住民の総意のもと修繕が行われればいいのですが、ここにもタワマン特有の問題が潜んでいます。
タワマンは低層階では7,000〜8,000万円程度から購入できます。もちろん普通の会社員がこのような物件を購入することは簡単ではありませんが、いわゆるパワーカップルと呼ばれるような、共働きの高所得世帯であれば手の届く水準です。しかし、タワマンの高層階ともなれば、1億、2億、3億円……という世界。ちなみに2021年の販売最高額は「パークコート神宮北参道ザ タワー」(専有面積238.55㎡)の13億7,000万円。ここまで高いと、部屋や設備の想像さえも難しくなります。
このような高額物件を買えるのは一部の富裕層か外国人投資家のどちらかでしょう。特に、外国人投資家にとって東京の不動産は、諸外国の主要都市と比べるとずいぶんと安く、投資対象として魅力的に映るといいます。
こうした事情によって、1棟のタワマンには実に幅広い層の住人・オーナーが存在することから、修繕のための同意を得るのがどれだけ困難なことか……想像に難くありません。
また、日常の管理は委託先の管理会社が行うものの、トラブルや住民からの意見への対応など、管理上の意思決定は理事会が行います。しかし、事情の異なる多数の住人が存在するタワマンでは、そもそも出席者の定数が足りず、理事会や総会を開催できない組合も多いといいます。
管理会社は理事会による意思決定がなければ動けないことから、大規模修繕に係る住民の総意が取れない場合、ずるずると工事が行われないまま設備の老朽化を見過ごすほかありません。ちなみに不動産鑑定士によると、「理事会の機能不全」は資産価値を下げる大きな要因だそうです(※)。
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入居して数年が経ち、初めての大規模修繕が行われるタイミングで、そのマンションが抱える「リスク」に気づく人も多いといいます。満足な修繕ができず、問題も解決しないまま時が過ぎたら……タワマンの「資産価値大暴落」のカウントダウンは、すでに始まっているといえそうです。