(※写真はイメージです/PIXTA)

性感染症の「梅毒」が爆発的に増加しています。梅毒とは何か。どのように感染し、どのような症状が現れるのか。自分やパートナー、周囲の人々を守るために知っておきたい知識を見ていきましょう。新宿サテライトクリニック院長・北岡一樹医師が解説します。

梅毒の症状(※写真あり)

梅毒は進行具合によって症状が分かれ、一次梅毒・二次梅毒・三次梅毒があります。

 

■一次梅毒:性器、肛門、唇などの感染部位に「痛くないしこり」ができる

一次梅毒の症状は、下疳(げかん)と呼ばれる皮膚病変です。性交渉相手の梅毒皮膚病変と接触した場所が粘膜であればどこでも、粘膜でなければ傷があるとそこから、T. pallidumが侵入します。約21日(3-90日)の潜伏期間ののち(2)、下疳を生じます。したがって、下疳のできる場所は性交渉で接触する場所として性器が中心にはなりますが、口唇や乳房、肛門もあり得ます。下疳は、無痛性の丘疹(きゅうしん:数mmの皮膚の隆起)として現れ、すぐに潰れて潰瘍(数mmの皮膚の欠損)となります(写真2)。また、この下疳にT. pallidumが大量に含まれており、梅毒感染を引き起こす皮膚病変は下疳が中心となります。

 

出典:佐藤武幸:思春期の性感染症医療の抱える問題点.日性感染症会誌,2009;20:80繰82.
[写真2]下口唇の硬性下疳 出典:佐藤武幸:思春期の性感染症医療の抱える問題点.日性感染症会誌,2009;20:80繰82.

 

~梅毒の下疳とサル痘の発疹は似ている?~

最近、話題の感染症としてサル痘があり、梅毒の下疳と症状が似ているところがあります。サル痘の発疹は、日単位で紅い斑点、丘疹、水疱(数mmの水ぶくれ)、痂疲(かひ:いわゆる「かさぶた」のこと)というように変化し(写真3)、かゆみ・痛みを伴うことが多いです。サル痘の水疱が潰れて潰瘍となることがあり、その際、下疳と似た形となりますが、サル痘は日単位で病変部位の形が変化していくこと、かゆみ・痛みがあること、梅毒の下疳は病変部の変化がないこと、かゆみ・痛みは基本的にないということで見分けることができます。

 

出典:UK Health Security Agency(UKHSA), 14 May 2022
[写真3]サル痘による皮疹 出典:UK Health Security Agency(UKHSA), 14 May 2022

 

■二次梅毒:全身(特に手足)に赤茶色のできものや発疹ができる

下疳の発生後数週間から数ヵ月以内に、二次梅毒となります。二次梅毒では、体幹、四肢、手掌、足底などに、バラ疹と呼ばれる対称性の紅斑または丘疹を来します(写真4)。これらも治療を受けなくても自然に消失します。また、バラ疹にはT. pallidumはほとんど含まれておらず、感染力は低いです。

 

出典:『梅毒の増加に直面して:解説と提言』(http://jssti.umin.jp/prevention/syphilis/03.pdf) 発行:日本性感染症学会・日本感染症学会・日本化学療法学会・日本環境感染学会・日本臨床微生物学会
[写真4]梅毒性バラ疹 出典:『梅毒の増加に直面して:解説と提言』(http://jssti.umin.jp/prevention/syphilis/03.pdf)
発行:日本性感染症学会・日本感染症学会・日本化学療法学会・日本環境感染学会・日本臨床微生物学会

 

出典:『梅毒の増加に直面して:解説と提言』(http://jssti.umin.jp/prevention/syphilis/03.pdf) 発行:日本性感染症学会・日本感染症学会・日本化学療法学会・日本環境感染学会・日本臨床微生物学会
[写真5]梅毒性乾癬:中心がかさかさと乾いた直径数ミリの暗赤色の発疹 出典:『梅毒の増加に直面して:解説と提言』(http://jssti.umin.jp/prevention/syphilis/03.pdf)
発行:日本性感染症学会・日本感染症学会・日本化学療法学会・日本環境感染学会・日本臨床微生物学会

 

■三次梅毒:心臓につながる血管に感染。死に至ることも…

三次梅毒においては、全身に肉芽種と呼ばれる、丸く盛り上がった発疹ができます。加えて、大動脈血管炎、大動脈弁閉鎖不全から左心不全となります。

 

さらに、どの時点であっても、中枢神経系が侵され、髄膜炎、脳卒中、全身麻痺、運動失調などを来す神経梅毒という状態になることもあります。

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。