梅毒の症状(※写真あり)
梅毒は進行具合によって症状が分かれ、一次梅毒・二次梅毒・三次梅毒があります。
■一次梅毒:性器、肛門、唇などの感染部位に「痛くないしこり」ができる
一次梅毒の症状は、下疳(げかん)と呼ばれる皮膚病変です。性交渉相手の梅毒皮膚病変と接触した場所が粘膜であればどこでも、粘膜でなければ傷があるとそこから、T. pallidumが侵入します。約21日(3-90日)の潜伏期間ののち(2)、下疳を生じます。したがって、下疳のできる場所は性交渉で接触する場所として性器が中心にはなりますが、口唇や乳房、肛門もあり得ます。下疳は、無痛性の丘疹(きゅうしん:数mmの皮膚の隆起)として現れ、すぐに潰れて潰瘍(数mmの皮膚の欠損)となります(写真2)。また、この下疳にT. pallidumが大量に含まれており、梅毒感染を引き起こす皮膚病変は下疳が中心となります。
~梅毒の下疳とサル痘の発疹は似ている?~
最近、話題の感染症としてサル痘があり、梅毒の下疳と症状が似ているところがあります。サル痘の発疹は、日単位で紅い斑点、丘疹、水疱(数mmの水ぶくれ)、痂疲(かひ:いわゆる「かさぶた」のこと)というように変化し(写真3)、かゆみ・痛みを伴うことが多いです。サル痘の水疱が潰れて潰瘍となることがあり、その際、下疳と似た形となりますが、サル痘は日単位で病変部位の形が変化していくこと、かゆみ・痛みがあること、梅毒の下疳は病変部の変化がないこと、かゆみ・痛みは基本的にないということで見分けることができます。
■二次梅毒:全身(特に手足)に赤茶色のできものや発疹ができる
下疳の発生後数週間から数ヵ月以内に、二次梅毒となります。二次梅毒では、体幹、四肢、手掌、足底などに、バラ疹と呼ばれる対称性の紅斑または丘疹を来します(写真4)。これらも治療を受けなくても自然に消失します。また、バラ疹にはT. pallidumはほとんど含まれておらず、感染力は低いです。
■三次梅毒:心臓につながる血管に感染。死に至ることも…
三次梅毒においては、全身に肉芽種と呼ばれる、丸く盛り上がった発疹ができます。加えて、大動脈血管炎、大動脈弁閉鎖不全から左心不全となります。
さらに、どの時点であっても、中枢神経系が侵され、髄膜炎、脳卒中、全身麻痺、運動失調などを来す神経梅毒という状態になることもあります。