収入の約8割を消費に回したら…貯蓄・消費シミュレーション
パワーカップルのなかでも年収だけではなく可処分所得も多くなる年収2,000万円ほどの層を考えてみましょう。
金融広報中央委員会の『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)』によると、年収1,200万円以上の世帯の「年間手取り収入(臨時収入含む)からの貯蓄割合」は「21%」となっています。21%を貯蓄しているということは、残りの79%を消費しているということです。
これを年収2,000万円パワーカップル世帯に置き換えると手取りが1,400万円ほどになるので、年間約294万円を貯蓄に回し、約1,106万円を消費している計算になります。
老後に向けてこの294万円を20年間貯蓄できたとすると、294万円×20年間=5,800万円。このパワーカップルが2人とも退職金をそれぞれ2,000万円貰えたとすると、さきほどの貯蓄額と合わせれば9,880万円になります。
加えて、年437万円(最大期待値)の老齢年金を2人分貰えたとすると年収は874万円となります。ただし、そこに所得税・住民税などの税金や健康保険料・介護保険料などを控除していくと、手取り額は年700万円ほどになります。
ここで、60歳で定年退職をすると残り何年生活することになるか計算してみましょう。『令和2年簡易生命表』(厚生労働省)によると、60歳男性の平均余命は24.21歳で60歳女性の平均余命は29.46歳です。小数点以下を切り上げると男性は約25年、女性は約30年生きるということになります。
仮に夫婦が同年齢の場合で計算してみると、前述の貯蓄額9,880万円と、年金を65歳から700万円を20年間と女性のみになった残り5年間の350万円を合計して
となります。
一方消費のほうはどうでしょうか。前述の1,106万円をもとに計算すると、
となります。
収入(A)から消費(B)を引くと、
と、5,000万円近い赤字が出ることがわかります。
今回は単純計算しておりますので、勤続期間中、年収1,212万円以上が続いた場合の期待値で計算した年金などは実際はこれ以下の金額になります。
また、80歳近いときにまでずっと同じ金額を消費しないのではないかという考えもあるかと思いますが、冒頭で述べた「退職直後の毎日がホリデイな有り余る時間といまだかつてない口座の残高」を目の前にして気が大きくなり、老後というセカンドライフの資金を猛スピードで消費していく夫婦も実際少なくありません。
老後破産という「見えないクレバス」に陥らないために
人生において、これまで歩んできた1本の道のりはよく見えますが、これから先に起こることはわかりません。筆者は、人生とは後ろ向きに歩いているようなものだと思っています。
どこにどのぐらいのスピードで進むかどうかは自分で選択できますが、その先にあるクレバスや壁を見ることはできないのです。
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景山 一輝
FP Office
ファイナンシャルプランナー