住んでみて初めて分かった……タワマンで起こりやすい摩訶不思議
やはり負のイメージのほうが広がりやすいのでしょう。しかし世間が思ってような「タワマン買った人は後悔ばかり」というのは誇張し過ぎで、実際の購入者は概ね満足をしています。ただ、当然、すべてに満足ということではなく、「住んでみて分かった」ということも多いようです。
そのひとつが「隣人」のこと。前出の調査では「入退去の頻度」として「頻繁」との回答が38.5%と、およそ4割にのぼり、特に2009年以降に誕生したタワマンで83.3%と高い割合になっています。一方で1998年以前にできたタワマンでは0%でした。新しいタワマンほど、入退去は頻繁に行われる傾向にあるようです。
また「所有者や管理者が不明で放置されている空き室の存在」については、7.7%のタワマンで「ある」と回答。こちらに関しては、築年数が経過したタワマンに多くある傾向です。決してその数は多くはないものの、「あの部屋、誰のもの……」という状態になっているタワマンが存在します。
タワマンはもちろん居住用に買う人が大半ではありますが、富裕層の間ではその効果は薄れたとはいえ、節税対策で購入する人が多くいます。また外国人を中心に、投資目的で購入するケースも多くあります。そのため「隣人でさえ、誰が住んでいるのか分からない……」、そんな状況がタワマンでは発生しやすいといいます。
考えてみれば、ひとつの建物とはいえ、低層階では数千万円、高層階では億を超えるような物件があり、さらに居住階に向かうエレベーターが分かれているタワマンも珍しくありません。入居者同士、コミュニケーションが希薄というのも、当然のことだといえるでしょう。
この住民同士のコミュニケーションが希薄という、大規模なタワマンでより顕著になる傾向により、起こりうる問題が大きく2つ。ひとつは災害時の住民の孤立化。実際、東京都心で起きたタワマンのボヤ騒ぎの際、避難することを諦め、部屋に留まった高齢者がいたそうです。
もちろん、発生した時間帯にもよるでしょうが、通常の住宅街であれば、近隣住民が声を掛け合い、避難をするでしょう。そのような地域コミュニティの形成は、大規模災害が間近に迫る首都圏では、重要課題になっています。タワマンも規模からいえば、ひとつの町内会。万が一のことを見据えて、密なコミュニティを構築する必要があるといわれています。
もうひとつの問題が、合意形成が困難なこと。「誰が持ち主が分からない」という状態になっていなくても、立場の違う人が集まっているタワマンでは、住民の合意をとるのが、他の集合住宅よりも困難といわれています。
たとえば修繕の必要が生じたとき、住民の合意が必要になってきますが、「それは一部の人しか使わないから……」などと、合意に達することができず、放置されてしまう……そんなことが起きているタワマンが散見されるのです。
資産価値が下がらないことを、タワマン購入の理由にあげる人は多くいますが、それを実現させるのは、なんといっても管理体制。販売時はどこも良いようにいうでしょうが、それが将来的にも実現できるものなのか、見極める目が必要です。