(※写真はイメージです/PIXTA)

世界的に感染が広がる「サル痘」……7月25日には国内でも初の感染例が報告されました。自然宿主がいまだ特定されていないなど、まだ謎の多いこの症例。いったいどのような病気で、またどのような対処法が有効とされているのでしょうか。米ハーバードメディカルスクールの関連研究所「ダナ・ファーバー癌研究所」で研究員として勤務する、医学博士の郭悠氏が解説します。

「サル痘」とはそもそもどんな病気か

サル痘とはどんな病気でしょうか。「痘」は「トウ/もがさ」という読み方の漢字で、辞書を引くと「皮膚に豆粒ほどの水ぶくれのできる病気。その水ぶくれ」とあります。

 

いわゆる「みずぼうそう」である水痘、一般に「天然痘」と呼ばれる痘そうなど、水疱(水ぶくれ)をつくる病気に使われています。

 

これらの病気について、みずぼうそうは水痘帯状疱疹ウイルス、天然痘は痘瘡(天然痘)ウイルスというDNAウイルスによって、それぞれ引き起こされます。

 

そしてサル痘も天然痘ウイルスと同じポックスウイルス科オルソポックス属のサル痘ウイルスが病原ウイルスです。これらの病気は症状も同じで厚労省によると以下のような症状がみられます。

 

  • 発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの症状が0〜5日程度持続し、発熱1〜3日後に発疹が出現する。
  • 皮疹は顔面や四肢に多く出現し、徐々に隆起して水疱、膿疱、痂皮となる。
  • 多くの場合2〜4週間持続し自然軽快する。
  • 小児例や、あるいは曝露の程度、患者の健康状態、合併症などにより重症化することがある。
  • 皮膚の二次感染、気管支肺炎、敗血症、脳炎、角膜炎などの合併症を起こすことがある。

 

しかし、致死率が30%近くあった天然痘に比べ、サル痘の致死率はこれまでの報告では0〜11%で、特に小児で高い傾向にありますが、近年の発症例では3〜6%程度に留まります。

 

天然痘は1980年にWHOより世界根絶宣言が出されており、いまこのような症状が出た場合はサル痘の他に水痘(みずぼうそう)、麻疹、細菌感染、疥癬(かいせん)、梅毒、薬疹を考慮する必要があります。

 

サル痘では発疹が出る前に熱とともに首、脇の下、足の付け根のリンパ節腫脹がみられることが他の疾患との鑑別になる場合があります。

 

確定診断はPCR検査で

診断法としてウイルス抗原の分離・同定や、ウイルス粒子の証明、蛍光抗体法などの方法がありますが、ワクシニアウイルスや天然痘ウイルスなど他のオルソポックス属感染症との区別はできません。

 

よって水疱や膿疱の内容液や蓋、あるいは組織を用いたPCR検査による遺伝子の検出やウイルスの分離が確定診断となります。日本では各保健所を経由して国立感染症研究所での検査が可能です。

 

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。