「一般的な会社員」が、5,000万円の家を買った場合
フルローンには「いわゆる“買い逃し”を防げる」「手元資金を残せる」「住宅ローン控除を最大限利用できる」といったメリットがあります。
一方、デメリットとしては、なんといっても返済額が増えること。実際に前出の国土交通省の平均値を例に考えてみましょう。
たとえば新築一戸建てを建てたとして、物件価格4,606万円に対して、3,409万円をローン利用した場合と、全額ローンを利用した場合を考えてみます。便宜上、金利等も同条件としています。
物件価格:4,606万円
借入金額:3,409万円、4,606万円
返済方式:元利均等
金利:当初5年0.5%、以降1.3%と仮定
返済期間:30年
まず一部ローン利用の場合、利息分の支払いは572万8,002円。当初5年の月々の返済額は10万1,993円、以降は11万2,328円となります。
そして全額ローンの場合、利息分の支払いは773万9,310円。当初5年の月々の返済額は13万7,806円、以降は15万1,770円となります。
全額ローン利用と頭金2割では、利息で201万円ほどの差、月々の返済額では3〜4万円の差となりました。
前述のとおり、全体の平均年収が433万円。また国税庁の別調査『令和2年分 民間給与実態統計調査』によると、正社員の平均年収は532万2,000円とされています。
「一般的な会社員」として正社員の平均年収を例に考えてみます。平均年収532万2,000円で賞与3ヵ月分と考えると、月収は35万円、手取りにすると27万円ほどです。ここでフルローンを利用した場合、月々手元に残るお金は10万円強……それで家族全員の生活費を賄わなければなりません。かなり切り詰める必要があるでしょうし、子どもがいる場合、年々負担が大きくなる教育費にも対応していく必要があります。
また年齢と共に給与は増えていくでしょうが、それは定年まで。60歳で定年を迎え、再雇用で働き続けても給与は平均3割減、という会社が増えています。この給与減に、月々の返済が耐えられるかといえば、かなり無理のある話。年金生活を前に住宅ローン破産、というのも現実的です。
可能な限り月々の返済額を小さくすることが、マイホーム購入の鉄則といえそうです。