首都直下地震…地盤に注目すると
構造によって地震による揺れ方が大きく変わるタワマン。そこで注目しておきたいのが「地盤」です。東京都が行っている地震の危険度を図る調査では、12の地盤の増幅率(「地表面の揺れの大きさ=最大速度」を「工学的基盤の揺れの大きさ=最大速度」で除した値)を示しています。
「山地」「丘陵「台地1」「台地2」は形成された年代が古く、揺れが増幅されにくい地盤。増幅率は1.0~1.7です。「谷底低地」は台地と台地の間の谷底に堆積物がたまった土地で、地震の揺れは増幅されやすく、増幅率は1.5~2.0。そして沖積低地は形成された年代が新しく、海面下で堆積物がたまりできた土地。地震の揺れも増幅しやすいのが特徴で、増幅率は1.5~2.9。
【地盤による増幅率】
■山地・丘陵・台地
・山地:1.0
・丘陵:1.4
・台地1:1.6
・台地2:1.7
■谷底低地
・谷底低地1:1.5
・谷底低地2:1.8
・谷底低地3:2.0
■沖積低地
・沖積低地1:1.5
・沖積低地2:2.3
・沖積低地3:2.6
・沖積低地4:2.9
・沖積低地5:2.9
出所:東京都『地震に関する地域危険度測定調査』
東京の地盤分類(図表)をみていくと、皇居より西側は山地・丘陵・台地。基本的に地震の揺れに強い地盤です。ただところどころ、谷底低地がみられるので、そのあたりは地震の際も揺れが大きくなる可能性があります。
皇居より東側は「沖積低地」が広がる地域。江戸時代初期まで皇居の東側にあたる日比谷は入江だったというのは有名話で、そのことからも地震の際は揺れの大きな地域だということがわかります。
さらに「中央区」を経て「江東区」に入ると、「沖積低地4」または「沖積低地5」が広がるエリアになります。たとえば多くのタワマンが林立する「豊洲」に注目すると、「豊洲1~2丁目」は「沖積低地3」、「豊洲3丁目」は「沖積低地4」、「豊洲4~5丁目」は「沖積低地5」が広がります。豊洲市場などがある「豊洲6丁目」は沖積低地のなかでは揺れが小さい「沖積低地2」です。それでも豊洲エリアは全体的に地震の揺れが大きな地域だといえます。ここで仮に耐震構造のタワマンだったとしたら……特に上層部ほど揺れに対する対策が必要だといえるでしょう。
さらによく耳にするのは「大地震の際、臨海部は液状化が心配」という声。実際、阪神淡路大震災の神戸ポートアイランド、東日本大震災での新浦安と、大地震の際、臨海部は液状化で地震直後は泥だらけとなり、その後は道が凸凹になりました。
「液状化のリスクがある地域では、建物は倒壊する」。そんな心配をする人も多いですが、そのような地域ではより深く基礎杭を打っているので、倒壊のリスクは極めて低いとされています。液状化で心配されるのは、むしろ、インパクトのある「画」によってエリアの評判が下がり、タワマンの資産価値が下がることかもしれません。
「やっぱり地震が怖いから、湾岸エリアはちょっと……」。そう考え「東京の西側なら安全」という発想に至るのは、少々短絡的です。
首都直下地震は、首都圏(東京都、茨城県、千葉県、埼玉県、神奈川県、山梨県)のどこかを震源として起こるマグニチュード7クラスの直下型地震のこと。さまざまなシミュレーションがされていますが、そのなかには、都心西部を震源とする直下地震や、立川断層帯を震源とするものも。その場合、大きな揺れを観測するのは、東京・臨海部ではなく、安心とされている、東京西部、台地が広がるエリアです。
地震大国に住む以上、将来の絶対的な安全はありえませんし、それを望むなら日本に住むことができなくなります。大切なのは、その土地をよく知り、その状況に合わせて適切な対策を講じることといえるでしょう。