自分の歯、きちんと「磨けて」いますか?
アメリカの歯科の先生と話していたとき「日本人は真面目で、手先が器用、キレイ好き。なのになぜ歯が悪い人が多いのか?」と訊かれたことがありました。
確かに多くの日本人の口の中の状況は、先進国としていかがなものか…と言わざるをえません。
「歯は1日3回磨いているから大丈夫です!」と言う人は多いのですが、「磨いている」と「磨けている」では、意味がまったく違います。
もしあなたが歯科医院で歯磨きチェックを定期的に受けていないのであれば、単に磨けている「つもり」になっているだけかもしれません。
意外に難しい、歯の磨き方の新常識に迫ります。
なぜ歯を磨かなくてはいけないのか?
■ヒトは歯を磨き続けなくては健康を維持できない不自然な存在
さてあなたは、なぜ歯を磨くのでしょう?
物心がついた頃から親が磨けと言うから、学校検診や歯科医院でムシ歯があると言われたから、よくわからないまま惰性で、あるいは仕方なく磨いている、という感じではありませんか?
けど「口が臭い!」と言われたくないから…というのは誰もがあるかもしれません。
そう、口の中は温度36℃・湿度100%ですから、食べ物が容易に腐敗する環境です。これは真夏の生ゴミ袋の中身と一緒! 大袈裟でも何でもありません。
ただし本当の生ゴミ袋はすぐにゴミ収集車が持っていってくれますので、あまり問題になりません。
しかし口の中ではこれが長期間放置されたまま熟成されます。それが動画1です。生ゴミというよりも、真夏の締め切った部屋の台所の排水管の中…いやそれ以上か?という感じですよね。
これでも痛くも痒くもありませんが、プラークがある限りムシ歯も歯周病も防げません。
【動画1】何年も放置されたプラーク(歯垢)(※閲覧サイトによっては表示されない場合があります。)
人はやる意味がわからないことに興味を持ちませんし、強制したところで長続きしません。学校での勉強がそうでしたよね。ですから歯磨きの必要性、というよりは、「歯磨きしなかった場合の危険性」を理解することから始まります。
いろいろな言い方があるでしょうが、私は患者さんに「ヒトは歯を磨き続けなくては、健康を維持できない不自然な存在だから」と説明しています。
文明がもたらした、自然からかけ離れた環境でしか生きられないのが現代人。歯磨きとは、せめてもの自衛策という位置付けです。
何が不自然なのか、それは今私たちが口にするもののほとんどが加工食品だということです。農水畜産物というよりは、もはや工業製品に近いもの。柔らかくてネチャネチャしたものばかりで、歯への付着も強力です。これは自然の食物とは大きく異なります。
ペットのムシ歯や歯周病が増えているのも、この不自然さがもたらした現象と言っていいでしょう。