(※写真はイメージです/PIXTA)

「タバコはやめたほうがいいですよ」「お酒は控えめに」…喫煙や飲酒をやめるよう、医師から助言を受けたことがある人もいるかもしれません。タバコや飲酒が引き起こす健康の問題は数多ありますが、その中でも今回は「食道がん」について見ていきましょう。相馬中央病院内科・齋藤宏章医師が解説します。

日本人に多い「食道がん」。飲酒と喫煙は高リスク要因

日本では2018年には2万5920人が食道がんにかかっていると報告されており(全国がん登録罹患データより)、男性では7番目に多いがんです。そのほとんどが、「扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん」と言われるタイプのがんであり、喫煙の習慣や飲酒の習慣は食道扁平上皮がんのハイリスクであることが知られています。三度の食事より、お酒が好き、タバコも好きだという人は要注意です。特に、お酒を代謝しづらい、いわゆる赤ら顔になりやすい人は、食道扁平上皮がんのリスクが高いと言われています。

なぜ日本人は食道がんになりやすいのか?

飲酒をすると唾液中にアルコールの代謝成分であるアセトアルデヒドが分泌されますが、これを飲み込むことで、食道を慢性的に刺激し、発がんを誘発するのではないか、と言われています。アセトアルデヒドを分解する酵素であるALDH2が遺伝的に不活性である人の割合は、アジア人、特に日本人などの黄色人種(モンゴロイド)には多いために、アジアでは食道扁平上皮がんが多いとされています。

 

また、最近の研究ではヒトパピローマウイルス(HPV)も食道扁平上皮がんの発生に関わっている可能性が示唆されています。2014年に発表された124の研究結果をまとめたメタアナリシスでは、食道がんの約30%にHPVの感染が認められ、特に食道がんの発生率の高いアフリカやアジア、中国では多いという結果になりました。まだ因果関係や発生の原因に関わっているかは不確かであり、ワクチンなどの予防策を構築するためには、より研究が進むことを待つ必要があります。

食道がんを早期発見するためには…

食道がんは進行すると食道の中を狭めるようになります。「食事が食べられなくなって」や、「最近食べ物がつかえるような感じがする」という主訴で来院され、内視鏡検査で食道がんが見つかることがあります。そのような症状がある場合には胃カメラを受けてみることも大事です。

 

一方で、早期の段階では症状は出ません。症状が出る前の段階で見つけることができれば、治療できる可能性が高くなりますから、飲酒、喫煙の習慣がある方や、胃カメラで食道が荒れていると言われた方は定期的な内視鏡検査を受けるのが良いでしょう。

次ページ最近の「食道がん治療」のトピック

※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。