ひとつの会社で働く会社員の給与は1998年をピークに減少
頑張って定年まで勤めあげる……確かに、ひとつの会社で働き続けることは忍耐が必要なことですし、素晴らしいことです。しかし、いまやひとつの会社にこだわることはリスクといえる状況です。
国税庁『民間給与実態統計調査』によると、日本人の平均給与は433万円。男性に限ると532万2,000円です。戦後、日本のサラリーマンの給与は右肩上がりでしたが、バブル崩壊後の1993年、初めて給与減を経験しました。その後、低成長ながらも前年比プラスが続くも、再び1998年に給与減を記録。以降2020年までの23年間、給与減となったのは14年。日本のサラリーマンは、すっかり給与が減ることに慣れ切ってしまいました。
さらに同調査で定年退職者も多く含まれているだろう、「勤続35年以上」の男性会社員の平均給与に注目してみると、2020年の平均給与は651万4,000円。「勤続20~24年」で663万6,000円、「勤続25~29年」で725万1,000円、「勤続30~34年」で743万1,000円とピークを迎え、「勤続35年以上」では給与はダウンします。定年前に役職定年を取り入れる企業も多く、そのため勤続年数が長いにも関わらず、給与減となると考えられます。
とはいえ35年以上もひとつの会社に居続けるのは、立派のひとこと。そんな「勤続35年以上」の平均給与、ピークは1998年で807万8,000円。以降は、年によって上下はあるものの右肩下がりで、現在は当時の7割を下回る給与となっています(関連記事:『「勤続35年以上」の日本のサラリーマン…1978年~2020年の「平均給与」の推移 』)。
1998年ごろに60歳定年を迎えたのは、1960年代前半に新卒社員として社会に出た人たち。日本の高度成長期を支えた立役者たちです。そして2020年ごろに60歳定年を迎えた人たちは、1980年前半に新卒社員として社会に出て、30歳を前にバブル崩壊を経験した人たち。40代のまさに働き盛りに不良債権問題で日本は苦境に立たされ、50代を前にしたときにはリーマンショックを経験。節目節目で大変な目にあいながらも会社員人生を全うしたわけです。しかし定年間近の給与は、諸先輩たちの7割程度。頑張って勤めあげたのに……努力は報われませんでした。
しかも厚生労働省『就労条件総合調査』によると、退職金はこの20年で1,000万円近くも減少しています。
【平均退職金の推移】
- 1998年:2,871万円
- 2003年:2,499万円
- 2008年:2,323万円
- 2013年:1,941万円
- 2018年:1,788万円
出所:厚生労働省『就労条件総合調査』
長い間、会社のために頑張ってきたのに、給与ばかりか退職金までも減額の一途。今の日本は「ひとつの会社で働き続けることは良いこと」とはとても言える状況ではなく、むしろ「ひとつの会社に働き続けることはリスク」と言える状況なのです。
徐々に人材の流動化が進んでいる昨今。給与を上げるための転職が当たり前になっています。その流れに取り残される人たちは、明るい未来を描けなくなっています。