株式トレーダーであれば、会社決算や日銀発表など多くの経済イベントに遭遇することでしょう。しかし、その際の値動きに苦い経験をした方も多いはずです。なぜそのようなことが起きるのか? 株式会社ソーシャルインベストメントの川合一啓氏が解説します。
好決算なのに「株価下落」…株式市場の不可解をプロトレーダーが解説 ※画像はイメージです/PIXTA

噂で買って事実で売る「セルザファクト」とは

株式市場は個人投資家や大口の投資家の「欲」が複雑に入り交じる場所ですから、株式を発行する会社の決算日前後の値動きに翻弄されてしまった投資家も多いはずです。

 

そのような市場で利益を残す人々は、大衆の欲を上手く扱えているプロのトレーダーです。彼らの多くは「会社に寄せられる期待」を上手く把握し、誰よりも早くその会社の株式を保有しようとします。

 

世の中には将来有望な株式会社と、先がみえない株式会社が存在しますが、有望な会社は優秀な数字を中期発表や企業のIR情報で公開しています。プロの株式トレーダーはその情報をいち早く察知し、他の投資家たちの話題にあがる前に株式を保有します。もちろんこの時点では世の中の期待が小さいので株価も低価格です。

 

そのうち、その企業が優良であることが口コミやSNSで広がり始めると、多くの投資家が株式を買い、価格が上昇し始めます。ここまでが「噂で株式を買い始める人たち」です。

 

やがて、その企業の決算日が訪れます。事前に公開された情報によって人々の企業に対する期待は多大なるものになりました。当然株価も連日高騰していて、いまにも高値を付けそうな勢いです。ついに優良企業の決算が発表されると、予想通りいい結果でした。しかし、株価は下落しています。

 

この状況は、初心者トレーダーにとっては混乱するものでしょう。

 

プロの株式トレーダーは「予想できる範囲のまずまずな結果だった」という事実に失望し、保有していた株式を売ったのです。これが株式投資の格言である「セルザファクト」(Buy the rumor, sell the fact=噂で買って事実で売る)の全貌です。