(※写真はイメージです/PIXTA)

気がかりな症状がなくても実は性感染症にかかっていた…という患者は、想像以上に多いようです。TwitterやYouTubeチャンネル「ぽいぽんch」で積極的に情報発信を行う剣木憲文医師(銀座ヒカリクリニック院長)が解説します。

実は、来院患者のおよそ半分は「無症状」

性感染症の検査を受ける人というのはどのような人でしょうか。性器に痛痒さがあったり、分泌物が出たり、症状を有する人はもちろんですが、その一方で、「まったく症状のない人」というのも性感染症の検査が必要な場合があります。むしろ性感染症クリニックに来院されるおよそ半分の方は無症状です。

 

今日は「無症状でも検査が必要になるのはどんな方か、なぜ必要なのか」について詳しくお話しさせていただきます。

無症状でも来院するのは、どんな人?

1.相手が性感染症の方

性感染症クリニックを訪れる半分が無症状というのは、決して誇張しているわけではありません。考えてみると、性感染症を発症し、症状のある人は普通、その状態のまま性交渉はしません。つまり性感染症を新たに発症してしまう人は、無症状で病原体を保有している相手(無症候性保菌者)との性交渉にて、相手から病原微生物をうつされるのです。その瞬間に二人の患者さんが誕生します。一人は「性交渉をしたら発症した人(有症状の患者様)」、もう一人は「相手が性感染症にかかった人(無症状の患者様)」です。

 

2.郵送検査で陽性が出た方

ネット通販やスマホの出現により、かつては都心部に集中する性病クリニックに足を運ばなければ受けられなかった検査や治療が、今の時代は全国どこにいても郵送検査やオンライン診療で事足りるようになりました。

 

特に性感染症の分野はとてもプライベート性が高く、家族や身近な人に知られずに検査や治療を済ませたいという思いがあります。ネットで検査キットを取り寄せ、検査の結果が陰性であれば、医療機関への受診は不要、結果が陽性であれば最寄りのクリニックを受診できます。その病気が薬の処方のみで事足りる場合においてはオンライン診療も活用でき、検査から治療まですべて自宅で完結できます。

 

性感染症にかかるようなSexual activityの高い方の多くは働き盛りでまとまった時間が取りづらい年代であることを考えても郵送検査会社やオンライン診療の恩恵は絶大です。

 

また我々のような小さなクリニックにとっても、待合室が検査を求める人で溢れてしまわずに済んでおり、まさにWin-Winです。

 

3.定期検査として来院される方

「当院には風俗で働いている方が定期検査に来られます」…この文をみると、一般に風俗嬢を思い浮かべると思いますが、最近では女性用風俗店に努める若い男性やゲイの方が利用するお店に勤められている方も来られます。風俗のサービスも多様化しており、毎月性器、のど、血液の定期検査を行うのが一般的です。ほか、アダルトビデオに出演する演者や監督等もご来院されます。その場合も網羅的に検査を行うので、無症状で性感染症が見つかることがしばしばあります。

 

4.ブライダルチェックとして検査を希望される方

その名の通り、婚前に二人で検査される方、まずは相手に内緒で自分だけ検査をしてみたいと希望される方、結婚でなくても、新しいパートナーができたときに性交渉の前に済ませたい方などがご来院されます。実は、こういった機会に無症状の淋病やクラミジアが陽性となる方は非常に多いです。

 

5.何かをきっかけに不安を感じた方

仲の良い身近な友人との何気ない会話で性感染症の体験談を聞かされ、今まで性感染症のことを考えたこともなかった方が、「自分も心当たりがある、あ、不安だ」となり、受診されるタイプです。

 

無症状で見つかることが多く、治療が必要な性感染症として、性器や咽頭のクラミジア・マイコプラズマ、梅毒などがあります。淋病は男性では尿道痛と膿が出るのが特徴ですが、それでも9.9%の方が無症状で見つかります。また膣やのどの淋病はそれぞれ33.3%、41.3%の方が無症状で見つかります(当院データ)。

まとめ:「無症状だから検査不要」と思ってはいけない

このように性交渉を1回でもしているのであれば、無症状でも性感染症のリスクはあります。無症状であっても気軽に性感染症の検査を受けられる社会、空気感となれば良いと私は思います。

 

 

剣木 憲文

ぽいぽんchこと、性感染症内科医ノリ

銀座ヒカリクリニック 院長

※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。