(※写真はイメージです/PIXTA)

「胃がん」は世界的にも多いがんの一つですが、日本を含む東アジアでの罹患率は特に高いことが知られています。胃がんの発症リスクを低減するために、私たちは何ができるのでしょうか? 齋藤宏章医師が解説します。

抗がん剤の開発も進む…ここ数年で新薬が次々登場

胃がんに対する抗がん剤の開発はここ十数年で目覚ましいものがあります。胃がんの抗がん剤治療は長らく、5-FUとシスプラチンという薬剤やあるいはこれらを内服薬や他の薬剤に切り替えた治療薬が中心でした。これらの薬剤はいずれも1980年代以前に開発されたもので、長きにわたって初回選択の治療薬に大きな変化はありませんでした。それがここ数年で劇的に変化しています。

 

まず、2011年に分子標的薬のトラスツズマブが初回治療の選択肢に加わりました。これはHER2遺伝子というがん細胞の増殖に関わる遺伝子をターゲットとした薬剤で、治療前にHER2の発現が高いことを確かめた上で投与します。2010年に行われた臨床試験の結果では従来の薬剤に加えて投与することで、生存期間を約5ヵ月延長させる効果が認められています。

 

2021年には、皮膚がんや肺がんなどにすでに用いられていた免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブが、従来の抗がん剤と組み合わせる形で初回治療に用いられるようになりました。これはいわゆるがん免疫療法とされる薬剤で、これまでの抗がん剤とは異なる仕組みの薬剤です。

 

また、次に期待される薬剤も登場しています。たとえば、バイオテクノロジー企業のFive Prime社が開発したFGF受容体2B阻害薬のベマリツズマブは、将来有望な薬剤として関心が寄せられています。2021年に報告されたアジアや欧州、米国で行われた第2相試験の結果では従来の化学療法のみに比べると生存期間を6ヵ月延長させ、特にFGF受容体2Bを過剰に発現している患者では14ヵ月も上回っていました。まだ臨床試験の段階ですが、この結果を有望視したAmgen社はFive Prime社を19億ドルで買収しています。今後も胃がんを取り巻く抗がん剤治療の選択肢はより増えていくものと思われます。

病気は生活習慣の積み重ね。健康に気を配ることも大切

日本人は胃がんの多い集団ですが、ピロリ菌の除菌や、定期的な内視鏡検査によって胃がんの発病を減らしたり、早い段階で見つけたりすることが可能になっています。加えて、胃がんの他のリスクである高塩分食や果物の摂取が少ないこと、アルコールや喫煙などは、日々の生活習慣の積み重ねでもあり、これらを改善することも立派な予防になると言えるでしょう。

 

 

齋藤 宏章

仙台厚生病院消化器内科

 

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※本記事は、オンライン診療対応クリニック/病院の検索サイト『イシャチョク』掲載の記事を転載したものです。