毎年約12万人が発病…日本は「胃がん大国」
「胃がんを防ぐにはどうしたら良いのですか?」「ピロリ菌は退治したほうが良いのでしょうか」「新しい薬の開発は進んでいるのでしょうか?」…私は胃がんの治療に関わるなかで、患者さんからよくこのような胃がんの予防や治療に関する質問を受けます。日本人は年間で約12万人が胃がんに罹り、年間で約4万人が亡くなっています。いわば“胃がん大国”の日本ですが、私たちにできる対策はないのでしょうか? 胃がんに関して、最新の治療も含めて、少し詳しく紹介していこうと思います。
「胃がん」は世界的に多いがん腫だが…
■東アジアの罹患率は特に高い
胃がんは世界でも多いがんのうちの一つです。世界185ヵ国の36種の主要ながんをまとめた報告書(GLOBOCAN 2018)によると、2018年に胃がんは世界で103万人が罹患し、これは大腸がんや皮膚がんに次いで6番目に多いがん腫となっています。胃がんによって亡くなる人は78万人にのぼり、これは肺がんに次いで2番目に多い数でした。この数値は世界で、がんで亡くなる人の、12人に1人は胃がんで亡くなっていることになります。つまり、年間に発見される数も多く、亡くなる方も多いがんということです。
また、胃がんは地域によって、なりやすさに差があることが知られています。地域別にみると日本を含む東アジアは最も胃がんの罹患率が高いことが知られており、北米では10万人あたり、男女でそれぞれ5.6人、2.8人の発生件数であるのに対して、東アジアでは男女それぞれ32.1人、13.2人とおよそ6倍程度の発生件数であるとされています。
■胃がんの約9割に「ピロリ菌」が関与
胃がんに地域差があるのはなぜでしょうか。これは胃がんの主なリスクである、ピロリ菌の分布と対応すると言われています。日本を含む東アジアはピロリ菌を保有する人口の割合が高いのです。ピロリ菌は幼少期より胃に感染し、慢性胃炎を起こすことで、胃がんの発生リスクになることが知られています。およそ9割の胃がんにはピロリ菌が関与していると言われています。他にも、高塩分食や果物の摂取が少ないこと、アルコールや喫煙などが胃がんのリスクであることが知られています。