子どもが理解できない原因は「感覚言語の違い」かも
私たちは外の世界を理解したり、学んだりするとき、五感(聞く、見る、味わう、嗅ぐ、触る)を通して認識しています。そして、右利きや左利きがいるように、私たちはそれぞれの「利き感覚」(一番優位に使う感覚)があります。その自分の利き感覚を主に使って、物事を理解して学んでいます。
たとえば、「雨」と聞いて真っ先に何を思い浮かべますか? 雨の音ですか、雨が降っている情景やしずくですか、雨やrainという言葉や文字ですか、雨の匂いですか、濡れたジメッとした感覚ですか? このように自分の優位としている感覚をこちらで知ることができます。これを自分の優位感覚と呼びます。
このそれぞれの優位感覚の特徴を知って、子どもの優位感覚にあった教え方をすることでより早く学ばせることができ、相手の理解力と記憶力を増すことができます。よくあるパターンは、親や先生は自分の優位感覚で伝えて、学ばせようとしてしまいます。違う感覚の子どもは戸惑い、理解しにくく、お互いがストレスを感じることになります。
優位感覚ごとの「効果的な学習方法」とは?
では、それぞれの優位感覚はどんなものでしょう。
聴覚系の方は聞いて理解することが得意で音声を取り入れた学習方法が良いです。メモやノートを取っているよりもしっかり聞くほうが大事です。また、話の内容よりも声のトーン、大きさ、調子や雑音が気になりますので、教える側は環境の「音」を注意することが必要です。英語学習では、オーディオリスニングなどを多く取り入れることが有効です。一時期話題になった聞き流し学習はこちらのタイプにはフィットします。
言語感覚系の方は文章や言葉を読み取るのが得意で、声に出した学習方法が良いです。メモやノートを取っていることが多く、書いていると内容が整理されます。理論的に話し、相手の話が理論的かどうか気になりますので、教える側は段階を踏まえて、言葉の意味をしっかり伝えていくことが必要です。言葉の意味に引っ掛かりを感じやすいタイプです。英語学習では、発音記号やテキストや単語帳などを取り入れることが有効です。
視覚系の方は見て理解することが得意で、映像や図やグラフなどで学習するのが良いです。ノートには付箋やマーカーなどで色を入れるとより覚えやすいです。全体像を気にして、頭に映像を浮かべて理解しますので、教える側はまず全体像をイメージしやすいように教えてから細かいこと説明すると良いです。英語学習では、映像や口の動かし方や実際のモノを見て学習すると覚えやすいです。
体感覚系は感じて理解することが得意で、身体を動かし、体験や実験する学習方法が良いです。テキストを読むばかりや聞くばかりの授業は、理解を「体に落とし込む」ことができにくいです。急かされることなく、自分の身体で感覚をキャッチすることが必要なので、教える側は感情や感覚なども伝えながら相手のペースを守ることが必要となります。英語学習では、口や舌の動かし方を説明してやって見せる、ジェスチャーや時にはジョギングをしながら英語オーディオを聞くのは有効です。
優位感覚を活かせば能力を発揮できる
それぞれの特徴を知ると、自分やお子さまや周りの人たちのタイプが思い浮かぶのではないでしょうか? 実は、私たちは自分の優位感覚で伝えたり、教えたりしています。たとえば、体感覚系の恵子さん(仮名)は授業が良くわからなかったと言います。先生の話は早くて書かれているものばかりを見てもわからなかったそうです。子どもの頃を振り返り、「私は落ちこぼれのほうでした(笑)」と言い表しています。恵子さんは現在、イラストレーターとして有名デパートや企業のポスターやカードのイラストを手掛けて活躍しています。
どの感覚も良いも悪いもなく、「その人らしさ」です。自分が良いと思う学習方法を子どもに押し付けるのではなく、相手にフィットするやり方を探して、試すことが必要になります。
中学生の淳くん(仮名)は英語の単語がなかなか覚えられなく、単語テストでは追試の嵐でした。聴覚系と体感覚系をバランスよく優位に持っているとみて、それまでただ書いて覚えている勉強方法を変えさせました。歩きながら単語を何度も音読し、スペルを覚えたと思えてから、初めて書くことをしました。何度かこのプロセスを繰り返すうちに以前より短時間ですべての単語を覚えられたと本人は喜んでいました。その後の英単語のテストは追試なしという結果になりました。
優位感覚に合ったコミュニケーションを使うことも有効
また、それぞれの優位感覚にはコミュニケーションの特徴もあります。時にはこちらを変えるだけでも子どもがわかるようになるケースもあります。
それぞれのコミュニケーションの特徴は以下の通りです。
聴覚と言語感覚系は論理的に段階を追って、長い文章を淡々と話します。言葉の意味を大事にして、話を聞いてもらうことを好みます(先に話されると話を聞いていないことが多いかも 笑)。「理解した」「意味がわからない」と言うことが多いです。
視覚系は映像を見ながら話をするので、話が早いです。頭の中で見ている映像が切り替わると話も切り替わるので話が飛びがちになります。「話が見えない」「〜に見える」と言うことが多いです。
体感覚系は身体に落とし込んでから言葉にしたり、行動にしたりするので、話や行動がゆっくりです。相手との距離を近くとりがちです。「モヤモヤする」「ドキドキする」などの擬音を多く使い「腑に落ちる」と言います。
ですから聴覚と言語感覚系からすると、視覚系は話が飛び、体感覚系は擬音が多く答えが遅いので、分かりにくいと思われます。
視覚系からすると、聴覚と言語感覚系の話は全体像が見えにくく、体感系は反応が遅いので、分かりにくいと思われます。
体感覚系からすると、聴覚と言語感覚系の話は説得されているようで冷たい感覚があり、視覚系は話が早すぎてついていけない、分かりにくいと思われます。
子どもができない大きな理由の一つには、自分と違った優位感覚でのコミュニケーション(言語)を使って教えられているか、適切ではない学習方法をしているか、もしくは、その両方だったりします。教える側の親や大人はこれらの特徴を知って、自分の優位感覚だけで伝える、教えるのではなく、目の前の相手に一番フィットする方法を工夫することが大切です。お互いのストレスを軽減するだけでなく、学習能力や記憶力が伸びることにもつながります。
福田 美智江
MCA 達成&成功コーチング 代表
国際コーチ連盟アソシエート認定コーチ
米国NLP協会認定マスタープラクティショナー
NPO法人日本スクールコーチ協会認定スクールコーチ
楽読(速読)インストラクター・トレーナー
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