マイホームの購入を決めたなら、頭金をどれくらい用意し、借入はどれくらいするか、考えなければなりません。「頭金ゼロ」も可能ではありますが、お金のプロたちは積極的に勧めることはないようです。「全額ローン」の先に待つものとは……みていきましょう。
全額ローン「やめとけ」も忠告聞かず…会社員を破産に追い込む「毎月の返済額」

一般的な会社員が5,000万円の家を買ったなら

フルローンのデメリットとしては、まず「住宅ローンの審査が厳しくなる」ということ。金融機関から厳しい目で見られます。また借入金利が高くなる場合があります。さらに利息負担が増え、返済総額も大きくなります。

 

たとえば5,000万円の物件をフルローンで購入する場合と、頭金を2割用意した場合を考えてみます。ローンの条件は比較しやすいよう下記のように同等とします。

 

◆借入金:5,000万円/4,000万円

◆返済方式:元利均等

◆金利:当初5年は0.6%、以降は1%

◆返済期間:30年

 

まず頭金2割を用意した場合、利息分は867万7,942円で、返済総額は4,867万7,942円。月々の返済は、当初5年は12万8,655円、以降は13万6,529円です。

 

一方フルローンを利用した場合、利息分は1,084万7,496円で、返済総額は6,084万7,496円。月々の返済は、当初5年は16万0,819円、以降は17万0,661円です。

 

頭金2割とフルローン。総額216万円ほどの差となります。車が1台買えるほどの違いです。

 

国税庁『令和2年分 民間給与実態統計調査』によると、正社員の平均年収は532万2,000円。賞与3ヵ月分と考えると、月収は35万円、手取りにすると27万円ほどになります。

 

年収の10倍程度の物件なら、フルローンを活用できるということから、5,000万円の物件なら購入可能です。頭金2割を用意したなら、返済負担率は29%ほど。年収400万円以上なら、返済負担率の上限は35%といわれているので、その範囲ではありますが、無理のない返済を考えるなら、返済負担率は20~25%に留めておきたいところ。そう考えると、あと1,000万円強の頭金を用意しておくと安心です。

 

フルローンを利用した場合、月々手元に残るのは10万円強。それで家族全員の生活費を賄わなければなりません。かなり切り詰める必要があるでしょうし、子どもがいる場合、年々大きくなる教育費にも対応していく必要があります。

 

また年齢共に給与は増えていきますが、それは定年まで。現在60歳で定年を迎え、以降は再雇用で働き続けることは可能ですが給与は平均3割減……という会社が増えています。この給与減に、月々の返済が耐えられるかといえば、かなり無理のある話。年金生活を前に住宅ローン破産、というのも現実的です。

 

「全額ローンはやめたほうがいい」というアドバイスを素直に聞き、無理のない返済か、熟考を重ねることが重要です。