100年先を見据えて、日本の年金制度は設計されていると言われているが
そんな日本の公的年金。そこで心配になるのが、将来的に制度が存続するのか、ということです。
難しい話になるので、細かな説明は省きますが、政府はおおよそ100年先の収支等の見通しを立てたうえで、公的年金財政の検証を定期的に行う制度(財政検証)を取り入れています。つまり100年先のことを想定したうえで、現状の年金制度は運用されているということ。急速に進む少子高齢化は織り込み済み、ということです。
また年金給付の財源は、税金と年金積立金(これまでに払い込まれた保険料のうち、年金の支払いに充てられた後、さらに余った分)を活用することでバランスを取る想定になっています。つまり高齢化が今よりも進んでいなかった時代の貯金。これが年金支給額の約5年分ほどで、米国では3年程度、ドイツでは数ヵ月程度といった状況で、他の先進国と比べても多いのです。
そしてこの積立金の多くを運用しているのが「年金積立金管理運用独立行政法人(GRIF)」。それによると、2001年度以降の累積収益は収益率年3%強、収益額80兆円以上(累積)と、なかなかの運用実績を誇ります。
このように見ていくと、日本の公的年金はかなり盤石だという印象を受けますが、ただ問題は、実際にどれくらいの年金を受け取れるのか、ということでしょう。
前述の16万円というのは、現状から算出したもの。もうすぐ年金を受け取るようになる60代であれば、おおよそこれくらいか、とイメージがつくでしょうし、そろそろ年金生活を意識する50代も、それほどブレはないと考えられます。ただ年金生活は数十年先、という世代にとっては、それほど参考になるものではありません。
厚生労働省『厚生年金保険・国民年金事業の概況』をみていくと、2000年代始めの2001年、厚生年金受給者の平均受取額は17万4,839円。国民年金は平均5万1,684でした。それから20年経った2020年、厚生年金受給者の平均受取額は14万6,145円、国民年金は5万6,358円でした。
つまり自営業などの人たちが手にする年金額は20年で5,000円ほど増えていますが、会社員などの人たちが手にする年金額は3万円ほど減っています。制度改正などもあり単純な比較はできず、また数値上のことではありますが、年間30万円以上も老後資金が消滅しているのです。
今後少子高齢化は加速度的に進み、現在高齢化率30%程度ですが、20年後には35%に達しようとしています。そのとき、年金受取額が今のペースで減少していったとしたら、恐ろしい事態だといっていいでしょう。
老後を見据えて自助努力が求められている昨今。さらなる努力をする必要がありそうです。