PCR検査ブームの終焉…背景は「診療報酬の大幅改定」
デルタ株感染が一段落した2021年の12月某日、青天の霹靂となる事態が生じました。厚生労働省は、「打ち出の小槌」とされた新型コロナウイルスPCR検査の診療報酬の大幅改定を通告しました。
検査を外注する場合、診療報酬はこれまでの18,500円から2022年1月には13,500円、4月からは7,500円に大幅減額という内容であり、多くの医療機関が発熱外来の存続すら考える震撼する事態となりました。
その理由として、自費で行うPCR検査が3万から5万円と過度に高額であること、社会経済活動をするうえで「PCR検査陰性」という不思議な宣伝文句が浸透し過剰な検査が実施されたこと、政府の財政として公費(税金)での支払い継続の有用性が高くないと判断されたことなどが理由とされておりますが、真相は不明です。
「PCR陰性」に対しての過度な信仰は霧散し、雨後の筍の様に2020年から勃発した、日本における「新型コロナPCRビジネス」は淘汰され、本来あるべき発熱診療機関のみが残っていく選別の契機となりました。前述の内科クリニックでは、収益が見込まれないため発熱外来を廃止し、収益のよい自費診療としての美容を開始することになりました。
今回の診療報酬改定により、新型コロナウイルス感染症の診断はPCR検査と比べて感度は劣るものの、インフルエンザと同じ抗原検査でも十分その役割を果たせることも知れ渡りました。入手困難とされていた新型コロナウイルスキットも薬局などで購入が可能となり、企業や学校から配布され、抗原検査が身近なものとなりました。
2022年の感染力が強く大規模な感染を起こしたオミクロン株の流行により、発熱受診者が多くなり検査などの資源は有限であることを再認識されました。無症状の濃厚接触者患者を見つける努力の価値が低くなり、濃厚接触者のPCR検査はほとんど実施されなくなりました。
今後は内服薬の登場などによって、現在の2類感染症相当(結核、SARSなどと同様)を5類相当(季節性のインフルエンザと同様)とするのかという問題の本質は、政府や社会が新型コロナウイルスに対しての認識をどのように変えていくかが焦点となります。
新型コロナウイルス感染の濃厚接触者の期間を、2022年からは14日から7日(医療従事者などのエッセンシャルワーカーは5日)に短縮するなどの対応がされました。
諸外国のように日本でもウィズコロナを許容していく風潮が今後は予測され、季節性インフルエンザと同等の5類感染症相当の扱いとなれば、社会のあらゆる場面でのPCR検査スクリーニングのニーズはほぼなくなっていくでしょう。
医療機関においても、新型コロナウイルスへの抗ウイルス薬が登場した場合には、患者は早期の治療を希望され、検査結果に時間を要するPCR検査のニーズもなくなっていくでしょう。
武井 智昭
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