コロナで狂いだした発熱外来…本来のあるべき姿
開院して3年目になる、内科を標ぼうする診療所がありました。受診患者は1日15~20名程度で、ギリギリのところで維持していました。発熱外来の開設は新型コロナウイルス感染当時には考えていませんでしたが、実際の診療報酬体系を聞いて「医は仁術より算術なり」と雷に打たれたように発熱外来を開始しました。
この医療機関の発熱外来は、患者をほぼ診療せず、画一的にPCR検査を実施するものでした。本来の発熱外来のあるべき姿は、新型コロナウイルス感染の診断も重要である反面、それ以外の疾患に関しても患者・家族から懇切丁寧な問診と身体所見(からだの診察)を行い、新型コロナウイルス感染以外の疾患もきちんと鑑別して適切な治療方針を提示することが求められます。
具体的にはコロナウイルスPCR検査以外にもレントゲンや超音波検査などの画像検査、血液や尿検査、小児ではデルタ株が流行した2021年7月に流行したRSウイルスの抗原検査など、網羅的かつ迅速な対応が期待されていました。
実際に、発熱外来を受診した患者のなかでは腎盂腎炎(じんうじんえん)、新型コロナウイルス以外の肺炎、細菌性腸炎、肝膿瘍、蜂窩織炎(ほうかしきえん:皮膚の感染症)、急性白血病などの腫瘍性疾患、関節リウマチなどの自己免疫性疾患も経験しました。
また、患者と家族への接遇も重要であります。発熱を理由に受診したケースで、医師や他スタッフが温かい家庭的な雰囲気で診療を行い安心・信頼していただける場合と、画一的に機械的にPCR検査のみ実施した場合、患者からの信頼を得てその他の疾患で受診したいという気持ちになれるのは、お分かりいただけると思います。
発熱外来も、実際には患者と接する重要な機会であり、自分の医療機関をよく知っていただくアピールする場所でもあります。丁寧な発熱外来を行う医療機関は、患者から人気があることが多いように思われます。
前述の内科クリニックは、2020年度の収支としては大幅な黒字となりました。2021年度も「このままの感染が続いてほしい……」と思ったことでしょう。2021年には新型コロナウイルスワクチンも開始となった反面、7月から8月をピークとしたデルタ株による大規模な感染拡大(第4波)もあり、PCRを実施した医療機関の収益は上昇したものと推定されます。