経済的な自立を実現させて、仕事を早期に退職する「FIRE」が注目されたことで、若い世代においても資産形成の意識が高まっています。そのようななか、働きながら資産形成を実現する手段として不動産投資を選択する人も少なくありません。投資にあたりほとんどの人はローンを組みますが、頭を悩ませるのが「頭金をいくらいれるか」。なかには「頭金ゼロ」、つまり「全額ローン」で物件購入を考えるケースも。そこにリスクはないのでしょうか。みていきましょう。
FIREに憧れて…「全額ローン」でマンションを購入した30歳会社員の悲劇【現実的なシミュレーションで解説】

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頭金ゼロ…全額ローンで不動産投資は実現できるのか?

早期リタイアを実現させて、趣味やボランティア活動など「仕事以外」を中心とした生活をおくりたい……そんな夢を抱いている人は多いでしょう。

 

早期リタイア、いわゆるFIREを実現させるためにはいったいどのくらいの元手が必要なのか。リタイアの時期や、その後の生活スタイルによって変わるため一概にはいえませんが、一般的によくいわれているのが「年間支出の25倍」という目安です。

 

ただし、日本人の平均年収は433万円と、1990年からほぼ横ばいの水準……今後、この水準が急激に上昇する可能性は低いでしょう。

 

では、早期に資産を形成するためにはどうすればよいのか。方法のひとつが「資産運用」です。しかし、日夜忙しく働いている会社員が、1日中相場に張り付いているプロを相手に株やFXで財を成すことは現実的ではありません。

 

そこで、安定的なインカムゲインを得られるとして、不動産投資を選択する人が増えています。「サラリーマン大家」という言葉を耳にしたことがある人も多いでしょう。

 

不動産投資にはアパートやマンション、さらには1室から投資可能な区分から物件丸ごと購入する1棟投資まで、さまざまな方法があります。ただし、一般的に、区分投資でも何千万円もする買い物ですから、「全額キャッシュで」投資を開始できる人はほとんどおらず、多くは金融機関のローンを利用することになります。

 

どれほどローンを活用してもいいのか、さまざまな主張がありますが、よくいわれるのが「購入額の2割は自己資金」、つまり、物件価格に対するローンの割合は8割程度という比率が一般的です。

 

そのためには、それなりの頭金を用意する必要がありますが、お金を貯めている間に「これだ!」という物件が出てきたとしたら、どうすればいいのでしょうか。

 

頭金なし、全額ローンで物件を買えたらいいのに……そう考える人も多そうですが、結論からいうと、できます。

 

物件購入時のお金は、「頭金」「ローン」「諸費用」の3つに分かれ、物件価格の全額をローンでまかなうことを「フルローン」と呼びます。

 

スルガ銀行の「かぼちゃの馬車」事件以降、各金融機関はフルローンに後ろ向きである一方、医師や弁護士といった士業のほか、公務員や大手企業といった今後も安定的な収入が見込まれる好属性の先に対しては、金融機関は喜んでお金を貸してくれます。