年金「月22万円」でも厳しい…老人ホームのリアルな請求額【介護のプロが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

老人ホームを利用する場合、月々の費用はどれくらいかかるのでしょうか。両親や自分自身が納得のいく老後を迎えられるよう、目安となる月額費用や知っておきたい知識、今からできる対策を見ていきましょう。介護相談のスペシャリスト・堀内元氏が解説します。

現在の年金は「夫婦で月22万円」程度だが…

少子高齢化の影響で、将来もらえる国民基礎年金の受給額が減額になることが現実味を帯びてきました。国は減額幅を抑える施策として会社員らが加入する厚生年金の財源をスライドする考えで調整に入っています。

 

国民年金は20歳から、厚生年金は会社員になったときから保険料を毎月納めることになっていますね。少子高齢化の影響により「入り」が減っていくため、現にある財源を付け替えるしか方法がないのが実情です。「あちら立てればこちらが立たず」、日々納めてきた年金保険料が目減りする。これが現在、そして近い将来に渡るわが国の年金財政なのです。

 

令和4年度における月の年金額といえば、総務省が発表した「令和3年平均の全国消費者物価指数(生鮮食品を含む総合指数)」が公表されたことを踏まえ、厚生労働省は法律の規程に基づき令和3年度から「0.4%引き下げ」と決定しました。具体的には67歳以下の方で、国民年金(老齢基礎年金満額1人分)で月額64,816円。厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)で219,593円となります。

老人ホームの月額費用は10万円~20万円程度

「2025年問題」というワードを聞いたことがあると思います。団塊の世代が75歳に到達する年で国民の3人に1人が65歳以上となります。わずか3年後の話です。

 

そうなるとますます老人ホームの需要は高まります。老人ホームは公的介護保険制度下で運営されている特別養護老人ホーム(以下特養)や、私的に運営されている有料老人ホームなどがあります。

 

両者の月額費用を検討するとき、特養などの介護保険施設のほうが安価というイメージがあるかもしれませんが、最近では低所得入居者の補助が減額されたり、これまで安価に抑えられてきた食費や居住費の自己負担金が増額されたりなどのルール変更がたびたび行われています。その上で毎月の費用は10万円~20万円程度を試算しておく必要があります。

 

費用の内訳としましては、お部屋代、光熱費、食費、介護サービス費、病院代、薬代、おやつ代やレクリエーション費などがあります。

 

さらに、2000年の介護保険制度創設時は所得に関係なく介護サービス費の自己負担分は1割で統一されていましたが、2015年8月より所得に応じて2割負担、2018年8月からは3割まで負担しなければならなくなりました。

 

特養などの介護保険施設は40歳以上の方々が毎月納めている介護保険料がその財源の半数を占めています。介護保険料を滞納などしてしまうと市区町村より保険が下りず、莫大な費用が生じることになります。実際、2019年の差し押さえ処分を受けた高齢者は過去最の2万人を超えています。

「年金だけ」で老人ホーム費用を賄うのは結構厳しい

年金のマイナス改定が続く中で、冒頭にお伝えした令和4年度の国民年金は月額64,816円、厚生年金は219,593円(夫婦2人分ですので1人分に換算すると109,797円)です。年金だけで老人ホームを利用することは極めて困難と言わざるを得ません。すでに現状においても毎月溢れてしまった費用は親族が負担したり、財産などを売却して費用を捻出したりする方がいらっしゃるのが実態です。

 

今後も少子高齢化が加速する中では、年金だけで老人ホーム費用を賄うことは現実的ではないのかもしれません。費用面だけを見れば極端に安価な老人ホームなどもありますが、それに合わせるようにケアの質も金額に比例することを頭に入れて置かなければなりません。

 

また、公的介護保険制度では介護を必要とされている要介護者を介助量に応じて7つのランクに振り分け、ランクに応じた区分支給限度基準額(1ヵ月に市区町村から支給可能とされる介護費用の限度額)が定められることになります。要支援1~要支援2、要介護1~要介護5まであり、要介護5に向かうに連れて保険適用される限度額が与えられる一方、言い換えれば介護サービス費の費用負担も増すということになります。

将来介護が必要になったとき、困らないためには?

親の介護は突然やってきます。将来介護が必要になったときに知っておきたい知識、今からできる対策を何点かお伝えします。

 

①入居金の有無や退去時の返金保証などがきちっと契約書に記載されているか確認する。

⇒毎月の利用料の他に入居時に支払う入居金や一時金という項目を設けている老人ホームもあります。場所に寄ってはかなりの金額になり事前にチェックが必要です。

 

②毎月想定される老人ホームごとの費用詳細をチェックする。

⇒これはコロナ感染対策やティッシュなどの消耗品がいくらぐらいで設定されているのか、場所によっては徴収していないところと徴収するところがあります。私が以前遭遇した事例として、介護用品のカタログ代までもが毎月請求されていたということがありました。ご利用者やご家族が費用の詳細について納得されていれば問題ないのですが、実は先ほどの事例に関しては、私がチェックするまでカタログ代までもが請求されていたことを知らなかったというケースなのです。オムツやリハビリパンツ代なども、同じメーカー・同じ商品であっても老人ホームにより価格に差があります。

 

③身体障害者手帳の交付申請を検討する。

⇒身体障害者手帳は、ペースメーカーや透析療法などを受けている方など一定の条件に該当する方に交付される公的制度です。ペースメーカーや透析などを導入する場合ですと、医療機関側から手帳の話があったりします。しかし脳梗塞後遺症などにより手や足に麻痺が残存している場合、肢体不自由として手帳が交付される可能性があるのですが、交付を受けていない方が多い印象を受けます。身体障害者手帳の交付を受けることができれば毎月の医療費や薬代が無料になる可能性があります。一度お住まいの市区町村にご相談されることをおすすめします。

 

④生活保護を検討する。

⇒ご両親や兄弟姉妹に対し生活保護を受給することに引け目を感じる方々がいらっしゃいます。一方で金銭面が引き金となり親族間にトラブルが生じたり、親子間の関係性がこじれるケースがあります。昨今のコロナ禍により月の収入が大きく減少することが社会問題になっていますね。一度生活保護の認定を受けたら一生その状態が継続するわけではありません。途中で外れることもあります。憲法で保障されたセーフティーネットであり、困ったときの選択肢として持っておくべきでしょう。こちらもお住まいの市区町村が相談窓口になります。

 

⑤確定申告により医療費控除を受ける。

⇒毎月の老人ホームに支払った費用の一部やオムツ代などが控除の対象になる可能性があります。領収書に医療費控除額がきちっと記載されているか確認するとともに1年分を紛失しないよう保管しておきましょう。

 

⑥介護予防に資する生活を送る。

⇒何よりも老人ホームなどの介護サービスを利用せずいつまでも住み慣れた我が家で生活することが最大の願いだと思います。そのために私は口腔ケアをおすすめします。歯磨きを怠るとお口の中の細菌が増殖し体内へと侵入し内臓疾患を引き起こします。ご高齢の方々は加齢により免疫力が低下していますので細菌に負けてしまうのです。また入れ歯も重要です。入れ歯が合わないまま使い続けていると食物をうまくかみ砕けずむせたりします。その結果、誤嚥性肺炎を発症するリスクが高まります。また、入れ歯が合わないとうまく噛めないため、食欲が減退して栄養状態の悪化に陥る可能性があり、介護を必要とする状態になってしまうかもしれません。

 

<まとめ>

老人ホームの月額費用はおよそ10万~20万円程度と書かせていただきましたが、30万円、40万円という老人ホームもあります。ご自身が入居されるとき、またはお父様やお母様の入居を検討する際、納得した老後となるようライフスタイルや価値観、経済状況等をもとに家族会議を開くことをおすすめします。

 

 

堀内 元

主任介護支援専門員、介護福祉士、介護事務管理士

有限会社ホクセイ 代表取締役

有限会社ホクセイ 代表取締役 主任介護支援専門員、介護福祉士、介護事務管理士

早稲田大学人間科学部卒(健康福祉科学科専攻)。著書に『ケアマネ先生前進論』(文芸社)などがある。

重松清賞受賞。居宅介護支援事業所太田はびりす、住宅型有料老人ホームにじいろ太田、住宅型有料老人マイホームこもれび太田、デイサービス、訪問介護といった介護保険サービスと介護保険外サービスを一体的に運営する「ケアミックス」というこれまでにない新たなサービスモデルを構築し地域福祉に貢献している。

介護経営のセミナー講師として全国から依頼殺到中。介護経営のコンサルタントとしても活動中。

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著者紹介

連載介護のプロが解説!「安心の老後」を迎える知識

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